文化庁の新ロゴ候補発表。制作過程を公表します

8/29に文化庁が新ロゴの最終候補4案を発表し、5日間限定でメールによる意見の受付を始めました。

bunkachoss.png

■割と本気だしてロゴに応募しました
今回50周年を迎えロゴを刷新することにした文化庁。公募は、5月から約一ヶ月間募集していました。一方、僕も企業ロゴデザイナーの端くれとして挑戦。SNSでは勝利宣言をして臨みました。今回は、僕が作ったロゴの制作過程をすべて紹介します。

文化庁に作品をメールした後、SNSで高らかに勝利宣言。有言実行型というよりモブ臭がすごい。

(1)苦労した点:方針にダブりや漏れがあり、意図を汲み取るのが難しい

今回文化庁は、ロゴ募集にあたって以下の方針を示していました。

○ 新・文化庁,文化庁の新生を表現するデザインであること。
○ 文化芸術推進基本計画(第1期)に掲げられた「文化芸術の『多様な価値』を活かして未来をつくる」とのメッセージが込められたデザインであること。

これに関連し、文化庁HPを漁っていくと、体制図文化芸術推進基本計画の資料が開示されています。

ロゴ作成を行うにあたって、この資料は最高のヒアリング材料です。しかし、メモに起こして整理すると、壁にぶち当たります。

たとえば「多様な価値=文化芸術の本質的価値及び社会的・経済的価値の追求」と定義されているのにもかかわらず、さらに細かく見ていくと、最終的に目指す目標にリンクしていなかったり、疑問が多くでてきます。

しかし、公募なので、当然放置したまま取り組むことになります。通常のロゴ作成においてはクライアントと対話すれば済むので、この点は雲を掴むような苦労がありました。

(2)楽だった点:「文化庁」という文字は予め決められていた

逆に、楽だった点もあります。「文化庁」という文字は、長官の揮毫(きごう)を使用すると決まっていたのです(※揮毫とは、筆をふるって字をかくことです)。つまり、文字を前提に組み立てるのです。

左は提出を求められた7パターン、右は筆文字をスケッチしたもの

しかし、筆で書かれたこの文字、罠があります。

「文:化:庁=9:10:8」とアンバランスな割合で、一筋縄ではいきません。この文字の縛りについては、Twitterなどでも批判的な声が散見されました。

でも僕は好意的に受け取りました。「ロゴは、この文字に調和したものを作ればよい」と割り切ることができたからです。ヒアリング内容の真意がなかなか汲み取れない中、文字が決定していることは光明です。

 

2.制作過程のすべて

いつもの制作アプローチと異なりますが、概ね以下の進め方でロゴを作成しました。

  1. 文化庁のポジショニングを考える

  2. コンセプトの言語化

  3. スケッチ

  4. カラーの決定

  5. デザイン:最終仕上げ

(1)文化庁のポジショニングを考える

まずは、官公庁におけるデザインの共通項を探っていきます。
民間企業では、業界の構図を一気に把握できるカオスマップのようなものが存在します。これは、デザイン的にも企業ロゴを眺めて吸収できる最高の教材です。

しかし、官公庁にカオスマップはありません。企業が作っても何の価値もないのですから。

 そのため、自分で官公庁のロゴをかき集めます。(画像は、その後作成した、一定のルールを決めて自作した「官公庁一覧ロゴマップ」です)

官公庁ロゴ一覧

これを観察すると、日本の行政組織の体質やデザインに対する感性を探ることができます。穿った見方をすれば、「どうすれば採用されるデザインになるのか?」という偵察にもなります。

(2)コンセプトの言語化

次は、最も重要な工程、ロゴコンセプトの言語化を図る作業です。
通常であればヒアリングをクライアントに行います。
しかし、今回は公募のため、示された資料を読んで作りこむしか道はありません。

閣議決定された文化芸術基本計画を何度も読み込み、憑依して、重要なキーワードを浮かび上がらせます。

文章を読んで、要素をばらして、つなげて、読んで、つなげて...を繰り返して整理

 

(3)スケッチ

コンセプトが明らかになったら、ようやくスケッチに取り掛かります。ここでの練りこみが、作品の成否を分けるといっても過言ではありません。ブレインストーミングも意識もしつつ、方針との整合性を確認しながらスケッチします。

(※間違っても、「日本だから日の丸!w」というようなスケッチではいけません。)

スケッチ(一例)

(4)カラーの決定

ロゴのスケッチの骨子が決まったら、カラーの最終候補を絞っていきます。今回はコンセプトも重要ですが、筆文字を挿入することも勘案しなければなりません。(※間違っても、「日本だから赤!w」「前回のロゴが赤だから赤!w」ではいけません。)

いろいろテストした結果、カラーは以下と定義しました。伝統色のため、文化庁の揮毫とも調和するでしょう。

萌木色:新しく萌出でる色。新文化庁の誕生を示す。
紺桔梗:萌木色から、文化技術立国へと成熟した未来を示す。

揮毫との調和を目指して、伝統色の洗い出しを行い、サンプルで作成したロゴに載せてテスト。

揮毫との調和を目指して、伝統色の洗い出しを行い、サンプルで作成したロゴに載せてテスト。

 

(5)デザイン:最終仕上げへ

カラー調整の段階から、ようやくillustratorを駆使しながらロゴを仕上げていきます。
完成直前はこのようなフォルムになりました。

kettei.PNG

3.文化庁のロゴで何を表現したかったか

ここで初めて明かしますが、文化庁の募集要項は「デザインの概要説明は100文字まで」という縛りがありました。自分が何を伝えたかったかを改めてここで画像と共に紹介します。

Cultureの"C"を中心に、「文化芸術推進基本計画」を網羅していく

  • そのロゴは、「文化庁」と分かるものか?

とても重要なことですが、ロゴは、その組織が分かるかどうかが重要なポイントです。文化と聞いて誰しも想起するのは「Culture=カルチャー」という単語。文化庁の英称は「Agency for Cultural Affairs, Government of Japan」なので、「Cを表現しながら、ACAであること」を重点にしています。

  • すべて要素に(後付けではない)狙いがあるか?

画像の説明は、すべて今回募集要項にあった文化庁の意図を網羅的に抑えたものなので、1つ1つの要点は省略します。しかし、徹底的な言語化を行い、自分が憑依して、達成したいものをシンプルに表現することを心がけています。

実際に応募したロゴデータ全容

文化庁の募集要項は7パターンの構成が求められていたので、今回はそれをまとめた画像をご覧ください。

揮毫(筆の文字)は決まっていたが、英称のフォントは各人に任されていた。(クリックで拡大)

4.審査結果

タイトルから察しはついたとは思いますが、僕のロゴは敗れました。「惜しくも」と言いたいところですが、公募なので何位だったのかは検討もつきません。僕の制作ポリシーとしてストーリーは当然のこと「絶対に選ぶしかない魔力のあるロゴ」を目指していたので、壁の高さを感じました。特に、自分で完全否定した「日の丸モチーフ」「赤」「パッと見て文化庁とわからないもの」が最終候補に入ってくるとは...女々しくて辛いのでもうやめよう。次がんばる。

5.文化庁は、9/3まで「みんなの意見」を募集しています。

さて、文化庁は「みなさんの意見」を求めています。興味があれば、デザインについて感じたことを送ってください。いま気付いたけど、8/29に情報公開して9/3までなのか...

ちなみに、「御意見に対して個別には回答いたしかねますので,あらかじめ御了承願います。本意見募集は,新・文化庁シンボルマークを直接決定する投票ではありません。」とのことです。

■メールで送ってね!

  • (1)提出手段:電子メールのみ

  • (2)提出期限:平成30年9月3日必着

  • (3)電子メールアドレス:boshusymbol@mext.go.jp
    (判別のため,件名は【新・文化庁シンボルマークへの意見】としてください。また,コンピューターウィルス対策のため,添付ファイルは開くことができません。必ずメール本文に御意見を御記入ください。)

■このテンプレをコピペして使ってね!

  1. ・件名【新・文化庁シンボルマークへの意見】

  2. ・氏名/団体名(団体の場合は,代表者の氏名も御記入ください。)

  3. ・性別,年齢

  4. ・職業(在学中の場合は「高校生」「大学生」など在学する学校段階を表記。)

  5. ・意見

<本記事のquote文はすべて文化庁ホームページから引用しています>

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