2024年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
檸檬デザイン事務所が紹介する、2024年にインパクトの強かった企業ロゴの変更です(一部サービスロゴの変更を含みます)。掲載企業:Paypal(ペイパル)、Johnson&Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、ロート製薬、エターナルホスピタリティグループ(旧鳥貴族ホールディングス)、東京大学、FC今治、Lamborghini(ランボルギーニ)、JAGUAR(ジャガー)、明治安田生命保険、NOK、富士急グループ、OWNDAYS(オンデーズ)、ETS(TOEICロゴ)、ベイカレント・コンサルティング、artience(旧東洋インキSCホールディングス)、カナデビア(旧日立造船)、楽待(旧ファーストロジック)、プロパティデータバンク、ガーラ、アスエネ、Dinii(ダイニー)、IITTALA(イッタラ)ほか
檸檬デザイン事務所は企業ロゴ変更・新規事業ロゴをリードするデザインファームです。細部は制作実績もご覧ください。
PANTONEが発表した2024年の「カラー・オブ・ザ・イヤー(Color of the Year)」は「PEACH FUZZ」でした。このカバー写真は、PEACH FUZZにちなんだ配色としています。
2024年もたくさんの企業がCI(コーポレート・アイデンティティ)刷新、リブランディングのリリースがありました。
今回も檸檬デザイン事務所では、弊所が話題になったと感じたロゴや、上場企業等IRの観点から取り上げるべきと判断したロゴ、また、ベンチャー企業でも気になったロゴ変更を抽出して紹介していきます。
<関連記事>
・檸檬デザイン事務所の制作実績まとめ
・2023年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
・2022年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
*多くのリブランディングがあったため、弊所内で基準を設けて掲載しています。
*掲載画像は各会社のプレスリリース等から引用しています。
*本記事はデザインの視点で執筆した記事であり、各社との関係性を示すものではありません。
*掲載内容に不明な点がある場合、お問い合わせページよりご連絡ください(関係各社様のみ)。
2.Johnson&Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
3.ロート製薬(4527)
4.エターナルホスピタリティグループ(旧鳥貴族ホールディングス)
5.東京大学
6.FC今治
7.Lamborghini(ランボルギーニ)
8.JAGUAR(ジャガー)
9.明治安田生命保険
10.NOK(7240)
11.富士急グループ(9010)
12.OWNDAYS(オンデーズ)
13.ETS(TOEICロゴ)
14.ベイカレント・コンサルティング(6532)
15.artience(旧東洋インキSCホールディングス)(4634)
16.カナデビア(旧日立造船)(7004)
17.楽待(旧ファーストロジック)(6037)
18.プロパティデータバンク(4389)
19.ガーラ(4777)
20.アスエネ
21.Dinii(ダイニー)
22.IITTALA(イッタラ)
23.まとめ
1.Paypal(ペイパル)
国際的決済サービスのリブランディング担当はPentagram社
Paypalはアメリカに本社を置く電子決済サービス運営企業で、同名サービス190ヶ国以上の国と地域、21以上の通貨取扱い、4億アカウントと世界最大の金融ネットワークを有しています。2024年9月に新しいロゴについてのアナウンスがあり、このプロジェクトは国際的なブランド・エージェンシーであるPentagramが担当しました。なお、本記事執筆時点で日本語HPのロゴへ変更されておらず、今後順次変更がなされると予想されます。
【デザイン評:またもBPT(Boring and Plain Text)】
Paypalのロゴ変更について、まずリブランディングを行ったPentagramは素晴らしい事例ばかりで、Boring and Plain Text(つまらないプレーンテキスト、BPT)を量産しているわけではありません。しかし、たまたま著名なブランドがBPTとなってしまう事例が頻発している(ように見える)ために、国内のリブランディング事例にも影響を及ぼしているのもまた事実であり、今回もその例に漏れません。
改めてPaypalのロゴを見ると、ホームページの文言もキャンペーンイメージもすべて新しいフォントでまとめられています。ここまで一体となったものを見るとむしろ、CI→VI→UIの順路、つまりコーポレート・アイデンティティを確立した上で全体イメージの統一を行う手法ではなく、UIのタッチポイントを起点にリブランディングを図っているのではないかと想像が膨らみます。
2.Johnson&Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
137年ぶりの変更、背景に専門性強化
Johnson&Johnsonはアメリカに本社を置く医療機器・ヘルスケア商品を展開する国際企業です。2021年、消費者向け事業が独立し、医療関連企業としての専門性を強化する方針から変更が図られたと発表がなされています。その一方で、独立した消費者向け事業会社の不祥事が顕在化し、そのイメージを払拭する狙いがあると見られています。
【デザイン評:価値あるデザインを放棄】
Johnson&Johnsonの新しいロゴについて、可読性(読みやすさ)については新しいロゴの方がはっきりしたフォントで読みやすいです。しかし、私達消費者がスーパーを訪れたとき、購入行動は「パッとロゴを見て認識して買い物カゴに入れる」であり、ご丁寧に商品を読み「J,O,H,N,S,O,N…おお、これはJohnson&Johnsonだな」とブランドを識別するわけではありません。だからこそ、可読性(読みやすさ)よりむしろ、デザインの独自性の方が重要なのです。可読性と独自性の議論は前年の記事の中(2023年の主な企業ロゴ変更)でも述べており、これからも続いていくでしょう。
ロゴ変更が体制や事件等の背景を持っていたとしても、せっかく獲得した独自性を持ったデザインを放棄するのは残念でなりません。ちなみに、旧Johnson&Johnsonのロゴは共同創業者ジェームズ・ウッド・ジョンソン氏の直筆サインを元にしたデザインです。
3.ロート製薬(4527)
特徴的な形だった「ROHTO」表記をリブランディング
ロート製薬は、東証プライム市場に上場する医薬品メーカーで、目薬やスキンケア製品を主力としています。全国CMも多く放映し消費者認知も高い中、2004年から原型を維持していたロゴを刷新しました。
【デザイン評:1899年に使用した初代ロゴへの敬意】
直近のロゴはアンバランスな「R」、不規則な位置の「O」、この絶妙な「ズラし」がブランド浸透の間違いなく良い作用をもたらしており、この状況でのリブランディングは少し惜しい気持ちも感じられます。
しかし、よくこの形状を観察すると、1899年創業時〜1989年まで使用したロゴへ一部原点回帰しているようにも見えます。リブランディングにおいて、今まで顧客と築いた時間を無視せず、たとえ未完成であった過去のデザインであってもその要素を取り入れていくことはとても重要です。絶大な歴史と知名度を誇る企業だけができる最良の選択だったと言えるでしょう。
4.エターナルホスピタリティグループ(旧鳥貴族ホールディングス)
さらに組織を強く、理念をグループ名に込める
エターナルホスピタリティグループは、「鳥貴族」などの居酒屋チェーンで知られる飲食系企業です。リーズナブルな価格と幅広いメニューで瞬く間に庶民の心を掴んだ鳥貴族ホールディングスですが、今回「YAKITORI」を世界に広げるべく、グループ名を「エターナルホスピタリティグループ」に一新しました。
指針を社名に、旧ロゴでもその伏線が
企業が大きくなって商号を変更する場合は2つのパターンがあり、1つは「分かりやすくするために、著名なサービス名と同じにする(例:松下電器→Panasonic)」こと、もう1つは「全く新しい商号にし、新たな指針を示す(例:Facebook→Meta)」ことがあります。
今回新たな名称となった「エターナルホスピタリティグループ(以下「EHG」)」は完全に「全く新しい商号にし、新たな指針を示した」と言えます。さらに、モチーフとして採用された「∞(インフィニティ=∞)」は、鳥貴族ホールディングスのロゴの末尾にも使用されており、ストーリーの繋がりに驚くばかりです。
ただし、新社名は「医療っぽい」「介護っぽい」といった反応も散見されており、もう少しストレートに刺さる代替の言葉があったのかもしれません。飲食業界きっての大企業のチャレンジに、これからも期待したいところです。
5.東京大学
多角的に自身を捉え「世界の誰もが来たくなる」デザインに
東京大学は、日本においては説明不要の「最高学府」と形容される国立大学です。
今回新しいロゴでは「東京大学」から「UTokyo」への表記が変わっていますが、2013年に英称を「UTokyo」とした流れを汲んでVIの確立を図っています。
ポジショニングマップから進むべき方向性を模索、光る東大の緻密さ
東京大学のロゴの歴史を簡単に振り返ると、1948年に星野昌一名誉教授により考案された所謂「銀杏バッジ」が東京大学のロゴとなり、2004年の国立法人化を期に現在のロゴに至ります。
新しいVIの考案は「Modern or Traditional(現代的か保守的か)」「Friendly or Formal(親しみか格式か)」の二軸で他の大学を含めポジショニングマップを形成して新しいVIを決めていくなど、緻密な工程があり、無理な飛躍もなく素晴らしいリブランディングとなっています。
6.FC今治
初のJ2昇格、今治のアイデンティティを体現
FC今治は、愛媛県今治市を拠点とするサッカーチームです。元日本代表監督の岡田氏が代表取締役会長であることで知られていますが、2017年にJFL参戦後、2020年にはJ3、2024年シーズンには次期J2への昇格を決めるなど、クラブとしての実力も遂に実を結びはじめています。
【デザイン評:美しい波紋「これしかない」と思わせるVI刷新】
旧表記の「FC IMABARI」は決して視認性の高いものとは言えない表記になっていましたが、今回のロゴ刷新により視認性は大きく向上しています。そして、上記動画の示すとおり、今治の地に根付く瀬戸内海の波紋から作られた新しいフォントは、チームのアイデンティティを表現するのに最適なデザインとなりました。
良いブランドは、見た目のかっこよさではありません。その土地・その人・その商品、これらが生まれた経緯や理由を「まるで既にそこにあったかのように、素直に表現できているか」がポイントです。FC今治は新たな船を漕ぎ出すタイミングで、満点以上のデザインを生み出したと言えるでしょう。
7.Lamborghini(ランボルギーニ)
伝統的かつ高級ブランドの最適解
ランボルギーニは、言わずと知れたイタリアの高級スポーツカーメーカーで、フォルクスワーゲングループ傘下にあります。今回のリブランディングでは旧ロゴのエレガントな印象を維持しつつ、現代的なデザイン変更が行われました。
【デザイン評:歴史あるエンブレムはどこまで引き算すべきか】
伝統的なチームや会社が大きなリブランディングを行う事例は多々ありますが、時にはユヴェントス(セリエA・サッカークラブ)やMINI(自動車メーカー)など、フラットにし過ぎて、「格式や伝統が失われた」という批判の対象となるケースもありました。
その点、今回ランボルギーニのリブランディングは最低限フラットを追求するまでに留めており、立体的なBULL(雄牛)のシンボルに異論を唱えるファンは少ないようです。
歴史の長い企業にとって「どこまでデザインを引き算するか」その最適解を示しているのがランボルギーニかもしれません。
8.JAGUAR(ジャガー)
文字ロゴを一新、新たに2つのシンボルを公開
ジャガーも前述のランボルギーニ同様、高級車の1つとして認知されるイギリスの自動車メーカーです。2024年11月にVI変更の発表がなされ、コンセプトイメージとして小文字の「jaguar」、2つのシンボル(Jを模したシンボル、ジャガーを模したシンボル)が公開されました。
【デザイン評:複数のコンセプト、分散する訴求力】
長い歴史を持ちながらも、フォード傘下を経てインドのタタ・モーターズに売却されるなど、波乱に満ちた歩みを続けてきました。そして今回行ったのが、従来の優雅さを特徴とするデザインから一転、ミニマルデザインへの大胆な方向転換。特に、世界的に認知されているジャガーの象徴的なシンボルに加え、「J」を模した新たなマークを導入する必要性には疑問が残ります。この決定が、別の価格帯や市場戦略を見据えたものではない場合、その意図を理解するのは難しいと言えます。
9.明治安田生命保険
ブランド通称を「明治安田生命」から「明治安田」に
明治安田生命保険相互会社は三菱グループの大手生命保険会社で、4大生保の一角(日本生命保険、第一生命ホールディングス、明治安田生命保険、住友生命保険)として知られています。今回のVI刷新では、ブランド通称を「明治安田生命」から「明治安田」に変更となりました。※商号ではなく、ブランド通称の変更となります。
【デザイン評:合併企業の名称考案の難しさ】
新しいロゴデザインについて論じる前に、2社以上の事業体が統合してできた名称を並列すると、単純に2つの情報があり、これだけで顧客とのコミュニケーションには障害をもたらします。日本では東京海上日動、旧損保ジャパン日本興亜ホールディングス(現:SOMPOホールディングス)、アメリカでもJPモルガン・チェースなど、枚挙にいとまがありません。
「明治安田」というブランド名は、それを踏まえた上でコンパクトになっています。中長期的には短縮した名称や新しい名称も追求したいところですが、巨大企業同士の合併の場合、折衷案が最もグループ内でのハレーションを起こさない着地点であり、既存ユーザーが混乱しない答えなのかもしれません。
10.NOK(7240)
グループ全体をストレートな表現に一新
NOKは、東証プライム市場上場(7240)の自動車部品、電子部品等を製造・販売する総合部品メーカー。今回のリブランディングでは、カラーを紺色の単色で統一し、NOKグループ主要5社を含め一気にCI刷新を図りました。
【デザイン評:爆発する佐藤可士和氏の才能】
NOKの新しいロゴを含めCI(コーポレート・アイデンティティ)刷新を担当したのは佐藤可士和氏です。楽天グループやファーストリテイリングなど、数多くのリブランディングを成功に導いたことで知られています。佐藤氏の強みは、クライアントの事業規模がどれほど大きくても、明確な方向性を示し、それを一貫性のある形でまとめ上げる卓越したディレクション能力にあります。その成果物は、視認性が極めて高く、多くの人々の注目を引きつけるデザインとして評価されています。こうしたスキルは、企業のブランド価値を効果的に高め、市場での存在感を一層強固にする大きな要因となっています。
11.富士急グループ(9010)
富士急ハイランドを模したグループロゴを変更
富士急グループ(富士急行株式会社)は、富士急行株式会社(主に運輸事業)や株式会社富士急ハイランド(観光業や鉄道事業を手掛ける多角化企業で、富士山エリアを中心に事業展開しています。新たなロゴは富士山および周辺五湖(山中湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖)等から着想を得たもので、カラーも群青へ変更されています。
【デザイン評:機能的だった「ふじQ」ロゴの変更に疑問符】
富士急グループの新しいロゴを考案したのは、NHK、JRのサインなど著名な企業等のプロジェクトを担当した実績もある日本デザインセンターです。
富士急グループの現行ロゴは、旗艦店としての役割を果たしていた「富士急ハイランド」のシンボル(赤富士に「Q」)をベースとしたもので、愛称の「ふじQ」を即座に連想できる機能を有したデザインでした。新たなロゴは群青色を基調としており、運輸事業を含めグループを包括的にカバーできるシンボルが採用されています。富士急ハイランドのロゴは引き続き使用されるようですが、変更に至った真相が気になります。
12.OWNDAYS(オンデーズ)
国際的ブランドを目指すアイウェアブランド企業のVI刷新
OWNDAYSは、日本発のアイウェアブランドで、リーズナブルな価格と多様なデザインが特徴です。アジアを中心にグローバル展開しています。2002年の創業後、順調に店舗展開を図ってきたものの、2008年債務超過に陥り倒産寸前に。その後「破天荒フェニックス」などで知られる田中修治社長が同社の株式70%を取得すると、大幅な構造改革を行い、2025年現在では13ヶ国500店舗に拡大するまでに至っています。
【デザイン評:スイッチをモチーフにしたロゴを維持】
OWNDAYSの新しいロゴはリブランディングのコンセプトを「OWN ‘your’ DAYS」とし、従来のロゴの視認性を上げたような軽微な変更に留まりました。
OWNDAYSの語感にあるスイッチの「ON/OFF」、略称の「OD」、メガネのイメージはそのまま維持されています。ボールドになった新しいロゴは実店舗展開においても、消費者に大きな混乱はなくブランド刷新が続いていくものと思われます。
13.ETS(TOEICロゴ)
受験生に馴染みのあるTOEICの隣にあった「あのロゴ」変更
ETSは、TOEICやTOEFLなどの試験を運営する非営利団体で、世界中で英語教育の支援を行っています。ETSというだけで明確なロゴを連想するよりも、かつてTOEICなどを受験したことがあるのであれば、旧ロゴを見てハッとする方は多いのではないでしょうか。
【デザイン評:「TOEIC」表記を邪魔しないデザイン】
ETSの新しいロゴについて、グローバルリブランディングの一環として星またはアスタリスクを連想させるものが採用されました。未来志向と学びの継続性を象徴するデザインを採用。TOEICの問題用紙の掲載イメージも公開されており、「TOEIC」の文字にも調和するデザインとなっています。TOEICそのものの文字デザインがブランドを認識できないレベルに改変されるのであれば受験者に大きな混乱を招いてしまいますが、そのような事態に発展することはなさそうです。とはいえ、巷には意外にも「そのような事態」となるリブランディングをしてしまう事例もありますので、ETSの事例は十分参考にしたいリブランディング事例となるでしょう。
14.ベイカレント・コンサルティング(6532)
蒼天を突く「Beyond the Edge」なロゴへ一新
ベイカレント・コンサルティングは、東証プライム市場に上場する総合コンサルティング企業です。日本発の総合コンサルファームとして、様々なセクターを横断的にサポートすることが評価されており、社内にはどの分野も横串で対応できるエキスパートが揃っています。
【デザイン:1ワードの「baycurrent」、ブランド名になった瞬間】
ベイカレント・コンサルティングの新しいロゴは、ホールディングス化を機に一新されました。特異なフォントを使用せずシンプルなものですが、一気に洗練された印象となっています。何よりリブランディングとしての素晴らしさは、従来のロゴでは「BayCurrent Consulting」表記から「BayCurrent」、さらに削ぎ落として「baycurrent」という一語を造りあげた点です。加えて、(なぜか)敬遠されがちな英語の小文字で表記している点も、他社と大きく差別化できているといえるポイントです。既に大企業ではありますが、このユニークな「b」は今後もっと大きな認知を獲得していくはずです。
15.artience(旧東洋インキSCホールディングス)(4634)
ソリューションの変化、老舗企業が選んだ新社名は「Art+Science」
artienceは、東証プライム市場に上場するメーカーで、印刷インキや塗料等、様々な原料の製造を手掛けています。1896年の創業から120年以上の歴史を持つ企業ですが、今回旧社名東洋インキSCホールディングスから大幅なブランド刷新を図りました。
【デザイン評:この「a」が凄い!】
東洋インキはその名のとおり「インク」が製品のひとつでしたが、現在はインクにとどまらないマテリアルソリューション(色材、電子・光学・接着材料、コーティング等)を提供しており、新社名のartienceは「Art(アート)+Science(サイエンス)」、つまり色彩と素材から連想される新しいことばが採用されました。
ネーミングの成否は今後の市場の次第であり、数年前に「TOYO INK GROUP」としてブランド刷新を図ったばかりで内情が気になるところですが、まずは歴史を持ち大所帯の企業がこのブランド刷新を遂げた自体が素晴らしい試みだったと思います。
また、「a」のシンボルは、なんとなくのかっこよさ、ではなく追求の痕跡が見られます。なんとなくトレンドに乗ってデザインをまとめていくのであれば、小文字「artience」を大文字「ARTIENCE」とし、文字全体をおしゃれなグラデーションで覆ってしまうかもしれません。そのような行為に耽らず、黒基調の「a」にあえて2つの色の異なるスクエアを被せて、しかしまとまりのあるシンボルとして成立しているのは、ARTでSCIENCEな美しさを感じます。
16.カナデビア(旧日立造船)(7004)
日立でも造船でもない今、必然だった社名変更
カナデビア株式会社は東証プライム市場に上場する機械・プラントメーカーです。その業種はグループ傘下企業を含め多岐に亘り、プラント設計、エネルギー、インフラ開発等が主力事業となっています。
【デザイン評:矜持が伝わらないネーミングと配色】
1881年に大阪鐵工所としてスタートした同社は、1943年に日立造船へ改称し造船業を行っていましたが、1946年、戦後の財閥解体の第2次指定に該当し、日立製作所グループから離脱することとなります。さらに時を経て2002年に造船事業からも撤退し、「実際の事業と社名とでの乖離が続いていた(報道)」ことにより社名変更となりました。
カナデビアの新しいロゴ及び名称についてどう捉えるかは難しく、まずカナデビアという名称について、新語である点は他社と識別できるため有用です。しかし、「日本語の”奏でる”と、ラテン語の道を意味する”Via”を組み合わせた」経緯はやや短絡的で、なぜ日本語とラテン語を組み合わせるのか、背景や深みを感じない選択だと感じます。ロゴについても、前述のartence社とは対照的に、”文字全体をおしゃれなグラデーションで覆った”その理由を窺い知ることはできません。そして、カナデビアとして新しく始まったCMには社名変更について訴求してないようですが、なぜ必要ないと思ったかも謎に包まれています。
17.楽待(旧ファーストロジック)(6037)
一貫し続けた「意味のあるシンプル」さ
楽待は、東証スタンダード市場に上場する不動産投資プラットフォームを運営する企業です。2005年設立以来「株式会社ファーストロジック」の商号を冠していた同社でしたが、同社を支えるサービス名に商号を変更し、ロゴもシンプルなものに変更するに至りました。
【デザイン評:凡庸なシンプルロゴも、貫いていれば意味が変わる】
楽待の新しいロゴについて考察する前に、昨今の各業界のリブランディング事例を見渡すと、圧倒的にシンプルさやミニマルさが好まれている風潮がありますが、その会社が「なぜそのデザインに至ったのか」という背景を持っているのか否かはとても重要なポイントです。
同社は時を遡り2015年9月の旧ファーストロジック社のロゴ変更のタイミングから再三
「当社は『本質を見抜く』ことが成功への最短距離と考え(中略)できる限りシンプルにしていくことが重要です。」
と述べており、今回のリブランディングでもその方針が投影されています。また、同社はシンプルデザインに付き物であるリスク対応(商標視点での法務チェック)をしっかり網羅しており、攻守両面で意味のあるシンプルさと言えるでしょう。
18.プロパティデータバンク(4389)
「原点継承×仕組革新」という高い抽象度、デザインの高さはどう着地したか
プロパティデータバンクは、東証グロース市場に上場する不動産情報管理システム「@property」等を展開する企業です。2024年4月、「原点継承×仕組革新」と位置づけリブランディングを実行しました。
【デザイン評:結局、何者であるのか】
プロパティデータバンクの新しいロゴについて、直近までは同社を支えるサービス「@property」を踏襲したロゴを使用していましたが、複数の色を使用したシンボルに変更し、社名もすべてを英語大文字に変更することとなりました。
ブランディングにおいて、会社自身が何者で、何をなすのか伝えることはとても重要です。翻れば、たくさんのマニフェストを盛り込んでも、結局何者かを知ることはできません。
そう考えると、同社のリリースには「様々なサービス、財産・資産の集合体を表現」とされていますが、カラーも分散し、結局何者であるかを知ることは難しいリブランディングだったと思います。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の抽象度が高い言語化が行われ、それをデザイン化すると当然「なんとなくそれっぽいロゴ」となってしまう事例は意外にも多いため、MVVの策定からよりドラスティックに踏み込んだ議論と決断が重要になるでしょう。
19.ガーラ(4777)
一貫性のあるVI刷新
ガーラは、東証スタンダード市場に上場するゲーム開発企業で、オンラインゲームやモバイルゲームを中心に展開しています。
【デザイン評:既知顧客を置いてけぼりにしない堅実なリブランディング】
ガーラの新しいロゴは旧ロゴの文字を一つ一つ囲っていたいダイヤ型の図形が「A」内に集約され、ステップアップを感じさせるものとなっています。その一方で、「ガーラ」という名称は同業種ではないにせよ自動車の名称や施設の名称など、消費者等にとって混同しやすい要因となっている可能性があります。社名変更にはいくつかの選択肢がありますが(新たな指針から考案したり、すでに広告施策等で認知度の高い名称を活用(自社サービスや買収等))、このような方法も今後視野にいれると、ブランド認知の障害が一気に解決することがあります。
20.アスエネ
ベンチャーから本流を感じさせるロゴへ
アスエネ株式会社は、CO2排出量可視化クラウドサービス『アスエネ』を運営するベンチャー企業です。同社は「クライメートテック(気候テック)のスタートアップ」と標榜しており、2024年時点でシリーズCの大型資金調達を行う等、CO2削減・気候変動対策を牽引する企業として着実な歩みを進めています
【デザイン評:日本語から英語、親しみから信頼へ】
日本語表記4文字の社名/サービス名称は創業期の営業のファーストタッチでも認知が比較的得られやすく、スタートアップ界隈でこのような名称は多く存在します(食べチョク、アイカサ等)。
アスエネの新しいロゴは「ASUENE」と英字表記になり、旧ロゴのカタカナ表記から大きく印象が変わりました。フォントはStereo-Gothicのようで大企業でも採用されているもので、順調なシリーズ推移をみせる同社の今後のすべての活動(採用・事業拡大)に間違いなく好影響を及ぼすものとなるでしょう。
21.Dinii(ダイニー)
外食産業のインフラを目指すスタートアップのリブランディング
株式会社ダイニーは、「飲食をもっと楽しくおもしろく。」を目指し、飲食店向けのモバイルオーダーPOSを主力事業としている企業です。外食産業をFinance・HRを含めインフラ整備を担おうとする同社は、2024年現在シリーズBの調達を完了しており、これからの成長が大きく期待されています。
【デザイン評:モーションロゴだからこそ伝えられた「のれん」のストーリー】
旧ダイニーのロゴは、カオスマップなどで見た場合は埋没してしまうロゴだったかもしれません。しかし、今回のロゴはのれんをモチーフに据え、芯が通り大きな決意を感じるリブランディングとなりました。そして、特筆すべきは同時に公開されているモーションロゴです。揺れるのれんに「なぜこのロゴなのか」「これからどこに行くのか」という点においてクライアントやユーザーに納得させるための補助線を引く役割を果たしています。
なお、この素晴らしいリブランディングの裏側はダイニー公式のnoteでも細部が書かれています。
22.IITTALA(イッタラ)
フィンランドの老舗メーカー・革新的な変更
イッタラ(iittala)は、フィンランド発のデザインブランドで、アートやクラフトに現代文化のエッセンスを取り入れた食器類等の美しさは国際的な人気を博しています。IITTALAという名称はフィンランド南部にあるイッタラ村に由来し、1881年設立と歴史の長さも伺い知ることができます。
【デザイン評:大幅な変更も、それを超える美しさ】
リブランディングを担当したのはフィンランドのクリエイティブディレクターのヤニ=ヴェプサライネン氏(Janni Vepsäläinen)で、1956年頃に確立した旧ロゴを大幅に刷新しています。一部古くからのファンからは否定的な意見も出ていますが(「II」がローマ数字Ⅱを想起させ、2級品に見えるというコメントも)、ここまで刷新すれば当然の反応です。
しかし、デザインを見ると素晴らしい特徴を持っています。デザイナーとして生かさない手はない「II」「TT」といった文字の並びを、見事に調和させ、際立たせています。配色はイエローを選択。イエローだけを祭り上げることはしませんが、旧ロゴの濃い赤色から転換を決断できていることが重要なファクターです。これまでのファンに動揺があっても、これから引き寄せられるファンもきっと多くなるはずです。
23.まとめ
2024年もここに紹介できないほど多くの企業がCI(コーポレート・アイデンティティ)刷新を図りました。企業がCI刷新を図る理由は、企業にとって節目の時期で新たな決意を示すタイミングであったり、社内外の情勢の変化、資本関係の変化など様々な理由があります。また、変更を図る際のアプローチも、内部検討や社外の人材に任せたり等、様々な手段があります。
その一方で、企業規模によらず未だにBPT(Boring and Plain Text = つまらないプレーンテキスト)の動き、つまりフラットやシンプルなどという耳障りが良い言葉を盾に、自ら没個性に向かってミニマルに走るリブランディングも多く散見されます。
檸檬デザイン事務所ではCI(コーポレート・アイデンティティ)の役割は、「企業の実像を、社内外に投影するレンズである」と捉えています。2030年に向かってデザインの潮流がどこにいくのか、この記事が読者にとってその流れを作る契機になれば幸いです。
<告知>檸檬デザイン事務所は、新会社設立やリブランディング等、事業フェーズに応じ、費用感に柔軟性を持って取り組むことを心がけています。細部はContactページよりご相談ください。
2023年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
檸檬デザイン事務所が紹介する、2023年にインパクトの強かった企業ロゴの変更です(一部サービスロゴの変更を含みます)。掲載企業:ペプシコーラ、NOKIA(ノキア)、BURBERRY(バーバリー)、テレビ東京、八海醸造、livedoor、UUUM(ウーム)、日本特殊陶業、グロービス経営大学院大学、Galapagos(ガラパゴス)、夏目光学、ヒトカラメディア、トレイダーズホールディングス、有沢製作所、BUYSELL TECHNOLOGIES、マツリカ、アツギ、Fotographer AI(旧NectAI)、AMDlab、大阪大学ベンチャーキャピタル、tripla(トリプラ)、株式会社FOR YOU、住江織物株式会社、FREEDOM株式会社、Morght、アキュラホーム、INFORICH、株式会社ファンくる、株式会社アクアシステムズ
檸檬デザイン事務所は企業ロゴ変更・新規事業ロゴをリードするデザインファームです。細部は制作実績もご覧ください。
2023年も多くの企業がCI(コーポレート・アイデンティティ)の刷新を行い、新しいチャレンジに向けてリスタートを切りました。過去記事において、2022年の企業ロゴ変更も紹介しています。
今回檸檬デザイン事務所では、弊所が今年話題になったと感じたロゴや、上場企業等IRの観点から取り上げるべきと判断したロゴ、また、ベンチャー企業でも気になったロゴ変更を抽出して紹介していきます。
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・2024年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
・2022年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
*リブランディングや軽微な変更は取り上げていません。
*掲載画像は各会社のプレスリリース等から引用しています。
*本記事はデザインの視点で執筆した記事であり、各社との関係性を示すものではありません。
*掲載内容に不明な点がある場合、お問い合わせページよりご連絡ください(関係者様のみ)。
クラシカルという1つの答え
ペプシコーラは全世界の人々にとって馴染み深い飲料ブランドですが、誕生125周年を迎え2008年以来14年ぶりとなる新デザインのロゴを発表。球体の中央にブラックで「PEPSI」を配置し、3色のレッド/ホワイト/ブルーは変わらず、より均等に配置。新ロゴは「ブランドの自信と堂々とした考え方を反映しており」、伝統と未来の躍進を表現。新しいロゴは北米からスタートし、2024年から世界展開が予定されているそうです。
【デザイン評:「クラシカル」という明確な太字、明確なブランドメッセージ】
2008年から使用されていた現行ロゴを廃し、新たなロゴを発表しました。旧ロゴは100万ドルをかけ、黄金率・宇宙との相関・地球の磁場を論拠するほど壮大なものでしたが、今回は1960年代に回帰するような印象に。
リブランディングは、Tech系もFashion系もとにかくシンプルなものへと設計される傾向にありましたが、ほんの少しだけ潮目が変わってきたかもしれません。究極に精緻化するよりも、「背伸びせずクラシカルなものに」というのも一つの答えとなりそうです。
2.NOKIA(ノキア)
法人向けへの転換を強調した、60年ぶりのロゴ変更
フィンランドのかつての携帯電話業界の覇者・Nokiaは60年ぶりに新ロゴを発表。新ロゴは鋭角なデザインで、「NOKIA」の5文字を構成し、かつての青色から用途によって異なる色で表現される。CEOのPekka Lundmarkは、B2Bカンパニーへの転換を強調し、新ロゴはそのアイデンティティの変化を象徴している。
【デザイン評: 旧ロゴの要素をすべて無くすと、忘れられてしまうリスクも】
新しいロゴはとても現代的で直線的なデザインで、欠落した箇所を脳で補完したくなる要素もあります。この技法は、国内企業であればSNSを提供するnote、農業機械メーカーのkubotaのロゴで用いられています。
しかし、旧ロゴからコーポレートカラー(yale blue)もフォントも変わり、もはや旧ロゴから原型を留めていません。CEOは「旧ロゴの伝統を受け継ぎ…」という言葉でリブランディングを語ったそうですが、飛躍しすぎたリブランディングは、ハレーションを生むリスクがあります。ユーザーからの批判を最小限にして進めていきたい場合は、段階的に変更することをおすすめします。
3.BURBERRY(バーバリー)
「騎士の復権」に好意的な反応
イギリスを代表するラグジュアリーブランドであるBURBERRY。過去の記事において、ゴシック調にリブランディングを行い大きな論争を巻きおこしたBURBERRYでしたが、わずか数年で今回のロゴに変更となりました。
【デザイン評:シンプル化から一転、創業期の絵画調のシンボルを再構築】
企業ロゴのデザインを「ゴシック調でシンプルにしておけば間違いない」という風潮は、たしかにその通りで、清潔感もかっこよさもありました。しかし、シンプルなゴシック調が就活生のスーツのようにありふれて特別なものでは無いと気づき始めたのは、この当時のBURBERRYのリブランディングのタイミングだったのかもしれません。
今回のリブランディングは、1998年のロゴに回帰するのではなく、1901〜1968年(創業期)のより絵画的な騎士を再構築していることに伝統への尊敬を感じます。突如として訪れた騎士のシンボルの復権は、BURBERRYのアイデンティティを感じさせるものだと思いました。
4.テレビ東京(9411)
視聴者とのコミュニケーションを反映した「テレ東」
テレビ東京は1998年から使用していたロゴを25年ぶりに刷新。新しいロゴの赤いモチーフは、数字の「7(7ch)」、想いを心に届ける「矢(アロー)」、心を満たす「ハート」を模しているとのことです。
【デザイン評:視聴者とのコミュニケーションを反映した「テレ東」の文字ロゴ】
「テレ東」という愛称をそのまま使用するとともに、旧ロゴのカラーを概ね踏襲しており堅調なリブランディングとなりました。無理に洒脱感を出さず、国内市場向けには直球で日本語ロゴを使用する企業も増えており、とても理にかなっていると感じます。一方、実際にロゴを使用する場面を考えたとき、地方局での使用方法(7チャンネルではないテレ東系列もある)は想定する必要がありそうです。
5.八海醸造
次の100年に向け「ゴツリと手応えのある」新しいブランドロゴが誕生
八海山ブランドで知られる八海醸造は、創業100周年を期に新しいロゴを発表。手掛けたのは、過去note、クロネコヤマト、無印良品などのリブランディングの実績もある原研哉氏です。
【デザイン評価:ブランドの特性をデザインに落とし込む】
原氏はデザインについて、こんなコメントを寄稿しています。
最近は、イメージに偏りのない、つるんと無機質なロゴタイプが多い世の中ですが、Hakkaisanのロゴは、ゴツリと手応えのある特徴をつけています。酒は、どんな種類の酒でも何かしらの癖があり、そこに愛着や親しみを覚えるものです。そういう個性の肌触りを、文字のかたちに込めました。
様々な「癖」を持つお酒の特徴を捉えようとするならば、無機質な文字ロゴにはなりえません。かといって、様々な記号や色やフォント等を集合させるだけの「多様性」でお茶を濁すこともしたくありません。この新しいHAKKAISANのロゴは、結果としてその質感が伝わるまっすぐなものになっているように思えます。個人的には、ここに掲載されなかった次点の案や説明も見てみたいです。
6.livedoor(ライブドア)
不思議な認知度の高さで生き続けるブランド、初のロゴ変更
「Livedoor」の歴史は非常に複雑です。最も有名だったのは2000年代に堀江貴文氏がIT業界を牽引していた時代ですが、当時も2代目のLivedoorでした。さらに所謂「ライブドア・ショック」の後も一度社としての歴史を閉じたり、事業部門が他社に渡ったりと、本当に”色々あって”現在のライブドアは2022年に設立されたものです。
【デザイン評価:教科書どおりのリブランディング】
堀江貴文氏が率いる前の初代Livedoorから使用されていた旧ロゴ。インターネット黎明期の残り香を漂わせていいましたが、遂に変更されることとなりました。デザインは、昨今リブランディングで多用されている「シンボルをシンプルに、フォントは見やすく太いものに」を地でいっているような印象です。特に遊び心をくすぐられることもありません。
Livedoorという名称・ロゴは常に「認知度が高い」という理由のみでここまでゾンビのように生きている希少なブランドです。今回の変更は、このブランドの不思議な強さを再認識するニュースでした。
7.UUUM(ウーム)
「ポップカルチャー」が伝わるリブランディング
UUUMは東証グロース市場に上場する所謂エンタメ系企業(※)。有名Youtuberも所属しており、著名な存在になりつつあるUUUMも2023年にCI刷新を図りました。洗練された印象だった旧ロゴは「想いの熱量でセカイを切り拓く」という企業理念とともに、ポップカルチャーを思わせる文字ロゴへと変更されました。
※2025.1.15追記:親会社(フリークアウト)のTOB(株式公開買付)により2025.2.17をもって上場廃止が発表されました。
【デザイン評:強いネーミングは、何をするにも有利に働く】
ポップカルチャーを意識し、旧ロゴの持つクールさを捨てていることに好感が持てます。こう言っては元も子もありませんが、「UUUM」という独自性のある名称が強すぎて、正直何をやってもブランディングに失敗しないように思えます。ウームという呼びやすさ、UUUMという見やすさ・読みやすさ。凄い存在感です。命名の経緯は「名前どうしようか、うーむ。」ということから始まったという逸話があるそうですが、ラッキーパンチでも何でもいいのです。
本記事ではVI(ビジュアル・アイデンティティ、所謂ロゴデザイン)について解説していますが、その前段階であるネーミングがいかに重要であるかを証明しているような例でした。
8.日本特殊陶業(5334)
「まだ変身を残しているかも?」と思わせるロゴ変更
日本特殊陶業株式会社は東証プライム/名証プレミアに上場する、点火プラグ・セラミック製品を主力とする製造メーカーです。今回、英文商号「NGK SPARK PLUG CO., LTD.」を「Niterra Co., Ltd. 」に変更し、同時に企業ロゴを刷新しました。
【デザイン評:段階的な印象を受けるリブランディング】
所謂モノづくり系で歴史のある大企業ですが、大所帯のリブランディングは大きな労苦を伴います。例えば、2023年は旧日本電産が予てから使用していた英文商号「Nidec」をそのまま使用し、ニデック株式会社に商号変更しましたが、こちらも数年単位で段階的にリブランディングを行いました。
日本特殊陶業も今回の変更により、短くて口にしやすい英称と、そのコーポレートカラーを手に入れることができたので、段階的に「ニテラ」ブランドへの統一を図っていくのかもしれません。
9.グロービス経営大学院大学
羨ましいほど伝播する、経営陣とデザインファームの熱量
国内最大級のビジネスパーソン向けの経営大学院であるグロービス。メルカリ・NIKKEIなどのブランディングの実績を持つTakramと共同で新しいロゴの策定を行いました。
【デザイン評:完璧なブランドメッセージ】
本記事をまとめるにあたって閲覧した2023年の企業ロゴ変更の中でも屈指のリブランディングでした。ブランド変更に伴う対外的なメッセージは群を抜いた丁寧さがあり、これらを知ってリブランディングを受け入れない人はいないはずです。プレスリリースの記事では選考過程・意思決定・旧ロゴへの愛着まで惜しみなく語っており、さらに両者の座談会という形の記事では前編・後編にわたりその裏側を語っています。
旧ロゴは味のある「G」が特徴でした。新ロゴの「G」とフォルムは一致しないのに、面影をしっかりと感じるのは絶妙なデザインです。この制作プロセスと、それを受け止めるクライアント側。心底羨ましいプロジェクトです。
10.Galapagos(ガラパゴス)
美しいモーションロゴで築くユーザーとのコミュニケーション
株式会社ガラパゴスは、AIを活用した広告クリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」の運営をおこなう都内のITベンチャー。今回は企業の成長フェーズと、デジタルものづくりの環境の変化に直面し、CI刷新を図ったとのこと。
【デザイン評:美しいモーションロゴで築くユーザーとのコミュニケーション】
日本郵政やSUNTORY等多くの広告キャンペーンを手掛けているonehappyがリブランディングを担当されたそうです。刷新されたトップページを15秒ほど見るだけで、その魅力が十二分に伝わります。企業ブランディングはユーザーとのコミュニケーションが肝要ですが、このモーションロゴこそがその役割を担っているのだとはっきり示しているようです。
11.夏目光学
形のない「光」を表現した匠の技
夏目光学株式会社は、高精度光学レンズを手掛ける長野県飯田市の製造メーカーです。新しいロゴは「透過する光」をモチーフに、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏がデザインを担当したとのことです。
【デザイン評:形のない「光」を表現した匠の技】
キシリトールガムやおいしい牛乳など、功績を挙げれば暇のない佐藤卓氏によるデザインですが、当然案件が変われば新たな課題も生じるでしょう。このロゴの凄い点は、黄色の閃光のイメージに囚われず「光」を再定義し、これが「光」であると初見で納得してしまうこと。
また、カラーを赤から青への変更が実現している点(思い切った変更は同意が得られにくい)、細かな線のタッチ、これらも目立ってはいませんが、企業の本質に向き合っているからこそ成立しているのだと想います。
12.ヒトカラメディア
「熱源を、ともにつくる。」が伝わるシンボル
株式会社ヒトカラメディアは、オフィス開発や不動産開発など、「ミカン下北」をはじめ、様々なプロジェクトに共創支援をおこなう会社です。今回は企業成長に伴うCI刷新と、「拡大する熱源」をイメージしたVIが発表されました。
【デザイン評:「長い名称をどう伝えていくべきか」を考える】
例えば英字のブランド名を誰かに伝えるとき、一瞬で視認できるのは概ね6文字(例:TOYOTA、KAGOME)と言われています。とはいえ、文字数のためにブランド名を決めるのも本末転倒なので、どうデザインするかを考えるべきです。長い名称の場合の表現方法は①名称を短くする(例:エステー化学→エステー)②数段表記にする(例:WEF(世界経済フォーラム)のロゴ)③略称を用いる(MLB球団アリゾナ・ダイヤモンドバックス→略称D-Backsを使用)など多数ありますが、まだまだ発展する会社にあって、どのような選択をしていくかも楽しみなところです。
13.トレイダーズホールディングス
答えのない「可読性」と「独自性」のあり方
「みんなのFX」などを提供するトレイダーズホールディングス(東証プライム)は、旧ロゴを1999年以来刷新し、結果として「Traders」の可読性が高まり、コーポレートカラーに新たにレッドが加わることになった。
【デザイン評:答えのない「可読性」と「独自性」のあり方】
筆記調から、一気に視認性を意識したロゴに変更となりました。前提として「読めないロゴは認知すらされない」のはブランド展開の鉄則で、歴史的にも英字ロゴの潮流は読みやすくシンプルなものが求められるようになりました。
しかし、そんな状況下で、あえて逆張りし成功した企業は一気にブランドの価値を掴むことができるとも言えるでしょう。かなり無責任な意見ですが、トレイダーズの旧ロゴは、ケロッグのロゴのよう100年前からあったようにも見え、凄い可能性を秘めていたように思えてしまいます。
14.その他
・株式会社有沢製作所(東証プライム 5208)
・株式会社BuySell Technologies(東証グロース 7685)
・株式会社マツリカ
・株式会社アツギ(東証スタンダード 3529)
・その他(画像左上から新しいロゴのみ記載)
Fotographer AI株式会社(旧商号:NectAI株式会社)
株式会社AMDlab
大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社
tripla株式会社(東証グロース 5136)
株式会社FOR YOU(旧商号:株式会社For you)
住江織物株式会社
FREEDOM株式会社(グループ3社の商号変更)
株式会社Morght
株式会社アキュラホーム
株式会社INFORICH(東証グロース 9338)
株式会社ファンくる
株式会社アクアシステムズ
15.まとめ
2023年も多くの企業がCI刷新を図りました。CI刷新を図る理由は、節目の時期や社内外の情勢の変化、資本関係の変化など様々です。また、変更を図る際のアプローチも、社内外問わず様々な手段があります。
檸檬デザイン事務所ではCI(コーポレート・アイデンティティ)の役割は、「企業の実像を、社内外に投影するレンズである」と捉えています。そのレンズが曇っていたり傷ついていれば、光は屈折し、企業の色を届けることが出来ないでしょう。
<告知>檸檬デザイン事務所は、新会社設立やリブランディング等、事業フェーズに応じ、費用感に柔軟性を持って取り組むことを心がけています。まずはこちらのリンク先よりざっくばらんにご相談ください。
2022年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
2022年に個人的にインパクトの強かった企業ロゴの変更を15個紹介します。掲載企業:MIXI、シトロエン、ハンズ、note、HIS、CAMPFIRE、クレスコ、BIPROGY、ニッコンHD、新電元工業、クックビズ、REVISIO、雨風太陽、Miletos
檸檬デザイン事務所は企業ロゴ変更・新規事業ロゴをリードするデザインファームです。細部は制作実績もご覧ください。
2022年も多くの企業がCI(コーポレート・アイデンティティ)の刷新を行い、新しいチャレンジに向けてリスタートを切りました。
今回檸檬デザイン事務所では、弊所が今年話題になったと感じたロゴや、上場企業等IRの観点から取り上げるべきと判断したロゴ、また、ベンチャー企業でも気になったロゴ変更を抽出して紹介していきます。
追記:関連記事
・2024年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
・2023年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
・檸檬デザイン事務所の制作実績まとめ
<注意点>
・リブランディングでないもの、軽微な変更(例:Instagramのサービスロゴ変更等)は取り上げていません。
・本記事の掲載画像は各会社のプレスリリース等から引用しています。不明な点はお問い合わせページよりご連絡ください(関係者様のみ)。
2.CITROEN(シトロエン)
3.ハンズ(旧:東急ハンズ)
4.note(ノート)(5243)
5.HIS(エイチ・アイ・エス)(9603)
6.CAMPFIRE(キャンプファイアー)
7.アイフル(8515)
8.クレスコ(4674)
9.BIPROGY(ビプロジー 旧:日本ユニシス)(8056)
10.ニッコンホールディングス(9072)
11.新電元工業(6844)
12.クックビズ(6558)
13.REVISIO(リビジオ 旧:TVISION INSIGHTS)
14.雨風太陽(あめかぜたいよう 旧:ポケットマルシェ)
15.Miletos(ミレトス)
16.まとめ
1.MIXI(ミクシィ)(2121)
明確な太字、明確なブランドメッセージ
mixi株式会社は東証プライム市場に上場するIT関連企業。創業期SNSサービス「mixi」で大きく成長しましたが、現在はスポーツやデジタルエンターテイメン、ライフスタイル領域が中核事業となっています。
今回2022年4月に行われたCI刷新は2016年来6年ぶりで、本デザインは「世界のコミュニケーションインフラとしての信頼感、安定感、普遍性、リーディングカンパニーとしての存在感を表現」したとのことです。
【デザイン評:明確な太字、明確なブランドメッセージ】
太字と赤・オレンジのラインが目を引くデザインは、同一業界の他のロゴとしっかり区別でき、新たな出発を大きく印象づけています。また、今回明確に「赤=デジタルエンターテインメント領域等、オレンジ=ライフスタイル領域等」と定義し関連ロゴを設定していることについて、多角的な展開をする企業としてのメッセージ性・戦略性を感じられます。
2.CITROEN(シトロエン)
アイコン化の波と、伝統への経緯
シトロエン(Citroën)は、1919年創業のフランスの大手自動車メーカー。社名は創業者アンドロ・シトロエンに由来し、ロゴはベベルギア(やまば歯車)をモチーフとしています。2022年9月27日に発表された新ロゴは、100余年の歴史で10回目の変更となりました。
【デザイン評:アイコン化の波と、伝統への経緯】
日産やBMWの例と同じく、自動車業界におけるロゴのアイコン化がより顕著になっていると感じます。金属製エンブレムのように煌めくロゴを好む声も根強く、このロゴの評価も業界全体かつ中長期的な視点が必要となりそうです。
しかし、単に旧ロゴをアイコン化するのではなく、創業期のロゴ(楕円部分)に回帰している点は、革新しつつ伝統へのリスペクトを感じます。創業期のデザインを生かすのは、長い歴史を持つ企業やスポーツチーム等のリブランディングを行う際とても重要な視点です。
3.ハンズ(旧:東急ハンズ)
親会社の変更。社内政治も絡むリデザイン
ハンズは2022年3月、カインズが東急不動産ホールディングスより発行済全株式を取得しました。それに伴い「東急ハンズ」の「東急」が消え、2022年10月にはロゴの刷新が発表されました。
旧ロゴは両手のモチーフが特徴的でしたが、今回の刷新では「『手』を再定義する」をコンセプトに漢字の「手」をモチーフに制作した、と解説されています。
【デザイン評:親会社の変更。社内政治も絡むリデザイン】
本記事の中では唯一となる「著名なブランドが、親会社の変更により名称及びロゴの刷新する」という事例。名称も一新するという選択肢もある中、ハンズは、旧東急ハンズにあるうち、「名称(ハンズ)」「ブランドカラー」を継承することになりました。旧ロゴをそのまま踏襲すれば良いかもしれませんが、商標権の問題により簡単ではない場合があります(本件の内部事情は不明ですが、本記事公開日現在旧ロゴの権利者は株式会社東急ハンズのままです)。
新ロゴのルーツは漢字の「手」がモチーフです。はっきり「手」と読めてしまうと「ハンズ」というブランド名を想起できないので、適度に抽象化が図れていると思いますが、置いたら倒れそうな不安定さを孕んでいるように思えます。
認知されたブランドとは「ハンズのロゴはコレだ!」と考えなくても認識できるかどうかが鍵となりますが、その結果はこれからの地道なマーケティングに委ねられると言えるでしょう。
4.note(ノート)(5243)
脳で補完したくなるカットされた「t」
noteは2022年12月21日に東証グロース市場へ上場を果たしたIT企業で、SNSサービス「note」を展開しています。今回のCI刷新は、この上場を機に発表されたものです。
変更について同社は「ものづくり、アート、ゲーム、スポーツ、あらゆる人々の営みがnoteで生まれている実態に即したものにしました。いままで以上に多様な創作活動を応援する想いを込めています」とコメント。
【デザイン評:脳で補完したくなるカットされた「t」】
シンプルな設計のSNSサービス「note」。新しくなったロゴは優しいアイコン調のシンボルを廃し、「+(プラス)」に見える「t」を冠した文字基調のロゴとなりました。
その名のとおりCutと呼ばれる技法で文字の一部がカットされているデザインです。欠けている部分は、脳がその部分を補完しようとするため、ブランド名も認識することができます。旧ロゴに馴染みのある人からは戸惑いもの声もあるかもしれませんが「視覚的にシンプルなのに、意外性のあるインパクトを持つ」という優秀なロゴの要件は十分に備えていると思います。
5.HIS(エイチ・アイ・エス)(9603)
左から2009〜|2019.11〜|2022.12〜
旧ロゴを即修正。しかし...
エイチ・アイ・エスは東証プライム市場に上場する旅行事業者。1980年の創業以降旅行業界のベンチャーとして成長し、JTB等と並ぶ大手旅行代理店としての地位を確立している。新ロゴは2022年12月19日に発表。旧デザインの文字部分は引き継ぎつつ、ロゴ背景にあった図形を外したデザインに変更し、外形に囲われていた状態を「解き放つ」ことを表現したという。
【デザイン評価:旧ロゴを即修正。しかし...】
旧ロゴから図形要素を取り去りました。一般的には2019年まで使用されていたロゴの認知度が高く、前回の変更は大幅なCI刷新だったといえるでしょう。前回のデザインの説明は、要約すると「文字がなくとも一目でHISと識別できるシルエット」を目指すとのことだったのですが、僅か2年での変更となりました。
それを踏まえると、今回のデザインは「解き放つ」と表現しつつ、一貫性が保てていないようにも思えます。もし旧ロゴのデザインの反応が芳しくなかったのであれば、2018年まで使用したロゴを継承したものを考案してもよかったのかもしれません。旧ロゴは独特なシルエットでしたが、シルエットを廃して文字間の不自然さだけを残ってしまっているようです。実店舗を構えるビジネスモデルはCI変更の費用も膨大ですが、今後も変更されるような気がしています。
6.CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
識別性の高まったフォントと、「&」モチーフのシンボル
CAMPFIREは国内最大手のクラウドファンディングの運営会社。2011年にローンチされた同名サービスのほか、地域特化型、社会課題型等のクラウドファンディング運営も手掛けています。
今回のCI変更は6年ぶりで、2022年9月に変更が発表されました。細部はこちらの特設ページでもそのストーリーを確認することができます。
【デザイン評価:識別性の高まったフォントと、「&」モチーフのシンボル】
CMによって知名度の高いCAMPFIRE。そのあとCI刷新することは、かなり勇気がいるものだったかと思います。
まずフォントについて、シンプルに見やすくなりました。「ブラック・サンセリフ調」という昨今の王道ではありますが、とにかく見やすくかっこよくなりました。
シンボルマークは「&」を基調にしているとのことですが、これはいかに「&」を抽象化するかの闘いになります。
「&」という文字は繋がりを表現するキャンペーンでよく使用されている一方で、キャンペーン以外で「&」を使用する場合は注意が必要です。社名等に「アンド」が入ってないのに「&」を強調しすぎるとシンボルとブランド名の不一致が生じ、相当時間と費用を投下しなければブランド名を覚えてもらえません(たとえば、三井不動産)。
翻って今回のCAMPFIREについて。ロゴを見た瞬間に「アンドキャンプファイヤー」と読めるわけではないので、ある程度の抽象化は出来ていると思いました。
ちなみに、この「&」にはCAMPFIREの「CとF」も隠れているそうです。真意は不明ですが、クラウドファンディング(Crowd Founding)も「CとF」なので、ネーミングにも深みがあるのかもしれません。
7.アイフル(8515)
測定不能の新VI
1978年創立の消費者金融業・カードローン業者。東証プライム市場。新しいロゴは2022年7月7日にグローバル市場を見据えた新VI(ビジュアル・アイデンティティ=ロゴ)として発表されました。
【デザイン評:測定不能の新VI】
シンボルマークはほぼ旧ロゴを使用しているのですが、文字については大幅に変更されています。私は初見が「そこに愛はあるんか?」とカンフー女将が言っているCMだったので、フォントをカンフー調に寄せているだけなのだと思っていましたが、そうではなかったようです。プレスリリースには、
「アートシンボル」と組み合わせて使用する「社名ロゴ」は、温かみや優しさ、愛を感じさせる丸みのあるタイポグラフィを採用しています。各文字に「アートシンボル」と同様の右上がりの線を繰り返し、ポジティブなイメージに。全体のフォルムはデジタルデバイスやウェブ上での視認性及び利便性の高さを考慮して正方形に収め、効果的な余白が生まれるよう文字を配置しています。
とありますが、正直フォントの印象は怖い。もしかしたら、グルーバル市場で日本語を初めて見る場合は、評価が変わってくるかもしれません(ユニクロのカタカナロゴもクールと評されているようです)。結果よりも、上場企業がかなりチャレンジしていることは伝わりました。
8.クレスコ(4674)
重なり合った箇所の三角図形に釘付け
1988年創業、2001年に東証一部(現プライム市場)上場したIT企業。主に業務ソフトを中心としたコンサルティング及びソリューションサービスを提供。全体社員数は約2,700名。新ロゴは2022年4月に発表され、あらゆる対象にマッチするワイルドカードの記号として用いられる「*(アスタリスク)」がモチーフになっている、とのこと。
【デザイン評:重なり合った箇所の三角図形に釘付け】
ユーザーを惹きつけるには効果的な技法のひとつ「Hole(穴)」。重なり合った図形からぽっかり空いた三角は、キャッチーな存在感があります。
また、シンプルな線で構成されているため、ロゴの展開方法も無限に広がります。例えば企業パンフレットを制作する場合、ロゴを隅に配置しても、オレンジの同じ太さの線をデザインに取り入れたとしても、企業ブランドとして統一感のあるものに仕上がるでしょう。
9.BIPROGY(ビプロジー 旧:日本ユニシス)(8056)
虹色の頭文字をとった新社名は、ストーリーの勝利
三井物産系会社をルーツにもつBIPROGYは東証プライム市場に上場する所謂ITベンダーの大企業。2006年のアメリカのユニシスとの資本関係解消後、2022年4月に現社名に変更するとともに、新たなCIが策定されました。
【デザイン評:虹色の頭文字をとった新社名は、ストーリーの勝利】
歴史・規模・知名度も高い企業の新社名考案は、並大抵の労力ではありません。にもかかわらず、虹色の要素(光が屈折・反射した時に見えるBlue-Indigo-Purple-Red-Orange-Green-Yellowの7色)からとったBIPROGYという新名称。国際展開可能な英字の名称も限られる中、ここ一番でこのネーミングができたのは素晴らしいアイデアです。
シンボルは、安易にネーミング由来で虹色を使用しなかったことに好感。「多様性」「多くの人にとって愛される…」のような言葉に惑わされ4色5色にする事例も散見されますが、ブランドカラーは絞る方向で(増やしても差別化され意図を持ったカラーリングで)あるべきです。
10.ニッコンホールディングス(9072)
社内公募による限界
ニッコンホールディングス(ニッコンHD)は、貨物自動車輸送事業等を行う運送企業(である日本梱包運輸倉庫株式会社の完全親会社)。東証プライム市場上場企業。前身の日本梱包運輸倉庫の1953年の創業から70周年を迎えることを機に、ロゴマークを一新。シンボルマークはニッコンの「二」と「コ」をモチーフとしている。
【デザイン評:社内公募による限界】
物流業界において著名な上場企業の新ロゴ。ニッコングループ内でデザイン案を公募し、全215作品の中から選ばれたとのことです。社内公募やクラウドソーシングを活用したデザインコンペは、デザイン案をてっとりばやく収集することができますが、「So What(なぜやるのか?)」というストーリーには弱みが生じます。結果として選ばれたロゴも「社を賭して一新した!」と言い切るほど熱量を持たないが多いように思えます。
ニッコンHDは物流業界において著名な上場企業でこれ以上ないポジショニングです。しかし、社名の浸透という観点ではカメラのニコン(NIKON)や、製粉業のニップン(NIPPN)等混同される対象も多いため、この課題を検討しなかったかどうか、やや疑問が残るVI刷新となりました。
11.新電元工業(6844)
「電源業界もCI刷新」というニュースそのものに大きな期待感
新電元工業は、電源3社の一角を占める電気機器メーカー(東証プライム市場上場企業)。2022年7月から英字呼称である「Shin Dengen」をデザイン化した新VIに切り替えることが発表された。
Dengenの下のラインについて、「水平から上昇に転じていく「コンバージョンライン」は、エネルギーを有効活用し、自然環境を考え、お客様のビジネスと社会の成長に貢献していくという、私たちの価値を表現しています。」とのこと。
【デザイン評:「電源業界もCI刷新」というニュースそのものに大きな期待感】
電源業界の巨大企業も新しいロゴを発表。前述のニッコンHDなども含め、古いイメージもある業界の上場企業が次々とCI刷新に取り組むことは、業界全体のデザインに対する意識が高まるのではないかという期待感を抱かせてくれます。
デザイン自体に驚きのある技法などはありませんが、浮つきすぎないデザインに落ち着いている点は、ステークホルダーや社員等にもすぐに馴染むかと思います。ShinDengenという音自体「-n」で区切ることのできる三連符のような特性があるので、ここに着目したデザインを考案しても面白かったかもしれません。
12.クックビズ(6558)
「納得感のあるCI刷新は、すぐに浸透する」を体現
クックビズは飲食業界に特化した人材エージェント会社。2007年に創業し、2017年に東証マザーズ(現東証グロース)市場に上場を果たした。2022年8月、新CI使用、コーポレートカラーの変更等が発表された。
新しいロゴは旧ロゴにある掛け算を意味する「*(アスタリスク)」をシンボルマークに昇華させ、「解き放つ」を表現しているとのことです。
【デザイン評:「納得感のあるCI刷新は、すぐに浸透する」を体現】
シンボルにあるチェックマークのような形の集合体は、よく観察すると余白部分で「*(アスタリスク)」が見えてくる面白さがあります。
実は前述のクレスコでも「*」が登場したり、HISのCI変更理由で「解き放つ」という表現が登場していますが、2社と被ってしまったと考える人は少ないかと思います。このようなシンクロはよくある話なのですが、クックビズの場合は旧ロゴからの発展であることにすぐ納得がいきます。まさにロゴのリブランディングで大切な「なぜロゴを変更するのか」という点をうまく表現し、発信している例といえるでしょう。
13.REVISIO(リビジオ 旧:TVISION INSIGHTS)
ステージが変わるごとに社名を変更すべきなのか
都内のITベンチャー。単なるテレビの視聴率でなく、家庭に人体認識技術を活かし「視られている量」を測り、データを提供するユニークな企業として知られています。
各種リリース等によると、旧TVISION INSIGHT からREVISIOへ変更された経緯は、動画コンテンツや広告の多様化に伴い、テレビという特定の事業を表現した現在の商号を変更したとのことです。
【デザイン評:業界を取り巻く環境が変わったら社名変更すべきか】
文字数が少なくなり、赤と黒の2色に絞ったことで視認性が高まりました。
しかし、テレビや広告を取り巻く環境が変わったとして社名まで変更しまうのは、もう少し説明を聞きたい気持ちがあります。例えば、富士フイルムは写真フィルムが事業の代名詞となっていましたが、フィルムが斜陽産業になっても会社名は変更せず化粧品や医薬品業界に進出を遂げました(2006年にCI変更)。
TVSIONからREVISIOへ音の印象もガラッと変わり、むしろ難読化。なぜ英語のVISIONからラテン語のVISIOとしたのか。このCI刷新は、まだ取り返せる事業フェーズであったと捉えるのか、やや数段飛ばしな変更だったと思うかは、難しいところです。たらればではありますが、多様な変化を想定した未来予想図のもと、同じネーミングを使用するのがベストです。
14.雨風太陽(あめかぜたいよう 旧:ポケットマルシェ)
漢字、明朝ロゴ、サービス名と異なる社名。逆張りのインパクト大。
雨風太陽は、農家や漁師から旬の食材を直接購入できる「ポケットマルシェ」を運営する岩手県花巻市のベンチャー企業。同名サービスと同じ商号「株式会社ポケットマルシェ」を冠していましたが、2022年4月に「株式会社雨風太陽」への変更を発表しました。
プレスリリースでは、変更理由を次のように述べています(一部抜粋)。
私たちは「都市と地方をかきまぜる」をミッションに掲げ直し、全国各地の生産者を起点に「食」以外にも事業領域を拡大します。私たちは、生産者のさらなる所得向上に寄与し、さらには、雨や風、太陽のように地域社会に循環をもたらし、活性を促していきます。そうなれば、その土地固有の自然、歴史、風土を背景に、文化的独自性と経済的自立性を持った多様な地域が百花繚乱する日本を、未来に残していく道が開けると確信しています。
【デザイン評:漢字、明朝ロゴ、サービス名と異なる社名。逆張りのインパクト大。】
最近の新興企業のネーミングの傾向として、とにかく判を押したように①英語の名称②ゴシック調のフォント③社名もサービス名もすべて一緒、という状態が長きに亘って続いています。それが悪いということ無いのですが、そのようなネーミングだらけだと単純に埋もれやすくなるのも事実です。
そんな中で雨風太陽は、日本語一本・明朝体(少し崩したデザインで垢抜けている)・サービス名から離れビジョン特化の社名へ変更と、最近の傾向に対しての逆張りの衝撃が凄く大きいように感じます。「雨風太陽」という言葉も、地方の土や潮の匂い・質感が伝わってきそうな素晴らしいネーミングです。1つ言えるのは、先程同様、多様な変化を想定した未来予想図のもと、同じネーミングを使用するのがベストです。
15.Miletos(ミレトス)
フォントベースのみで伝わるデザインの魅力
Miletosは2016年に設立された都内のITベンチャー企業。主に経理不正チェックのAIプロダクト「SAPPHIRE(サファイア)」等を提供しています。
新しいロゴは2022年8月に発表され、「i」にあたる部分を強調したデザインが特徴。
アクセント記号を持つギリシア文字の「ί(イオタ)」と、アルファベットの「i」とのダブルイメージとして象徴的にデザインされています。「ί」は、ミレトス島(※)で物事の本質を探求し、自然哲学の礎を築いた哲人たちへの敬意を示し、「i」は、「intelligence(知性)」、「identity(アイデンティティ)」、「integrity(誠実)」を示します。
【デザイン評:フォントベースのみで伝わるデザインの魅力】
こちらも未上場ベンチャー企業ながら素晴らしいロゴだったので紹介します。旧ロゴはIT企業では汎用的なシンボルマークと社名の表記であったのに対し、今回のVI刷新で一気に命が吹き込まれるように魅力的になっています。
特筆すべきはMiletosの1文字目の「M」と3文字目の「l」の図形的特徴を上手く活かし、ブランドの狙いである「i」を強調できている点です。シンボルマークを廃してテキストベースのロゴのみの表現にもかかわらず、目を引くフォルムとなっているのは、まさにデザインの力を証明しています。
16.まとめ
以上15個の企業ロゴ変更を大企業・中小企業を取り上げてきました。変更理由は十人十色で
○周年を機に、上場を機に
現在の事業フェーズとCI(ロゴや社名を含む)が合わなくなってきてしまった
資本関係の変更に伴い現在使用する社名やロゴを使えなくなってしまった
など様々です。
また、CI変更のアプローチも様々で、著名デザイナーへ依頼したり、社内デザイナーで完結させたり、上場企業でも社内公募をする場合もありました。どのアプローチにおいても一長一短ありますが、キックオフ時での方向性の地固めや決定プロセスでのチェック機能によって大事故は防げるかと思います。
2018年気になったロゴ変更まとめ14個(下半期)
2018年下半期(7月~12月)に個人的にインパクトの強かった企業ロゴ・サービスロゴの変更を14個紹介します。EvernoteやZOZOなどの著名な企業から、中堅企業・注目のスタートアップ、スポーツチームまで。
2018年も残りわずかとなりました。
2018年7月~12月にロゴを変更した主な企業・団体を紹介します(企業ロゴ・サービスロゴどちらも含みます)。
今回檸檬デザイン事務所では、弊所が今年話題になったと感じたロゴや、上場企業等IRの観点から取り上げるべきと判断したロゴ、また、ベンチャー企業でも気になったロゴ変更を抽出して紹介していきます。
*リブランディングや軽微な変更は取り上げていません。
*掲載画像は各会社のプレスリリース等から引用しています。
*本記事はデザインの視点で執筆した記事であり、各社との関係性を示すものではありません。
*掲載内容に不明な点がある場合、お問い合わせページよりご連絡ください(関係者様のみ)。
説明不要のドキュメント管理サービス、Evernote(エバーノート)は8月、10周年を記念して大きな刷新。フォントはEVERNOTEからEvernoteへ、グリーンはより濃いものとなりました。
通常視認性を失いやすい「大文字から小文字へ」の変更、さらに最近のデザインの潮流という観点で見ると、『EvernoteがSerifという選択をした』という事実は革命的な意味を持つでしょう。象のデザインは、ゼロから見直しを図って結果的にフォルムを修正したとのことです。デザイン変更の理由は、CEOのポストで語られています。
2.BURBERRY(バーバリー)
有名ブランドのロゴ変更も、今年8月に飛び込んできたニュースです。バーバリーは20年ぶりのロゴ変更。力強いsans serif調に。 また、同時期に新たなモノグラム柄(創業者トーマス・バーバリー氏のイニシャルがモチーフ)も発表されています。
「新しいターゲットを探したリブランディングなのだろうか?」と推測せざるを得ないリブランディングです。ブランド成長に追従するリブランディングの手法では『BURBERRYの文字を消して騎士のマークのみを残す』という策が考えられるため、この方針転換は衝撃的でした。今後、どのような結果になるのかを見守る必要があります。
3.SIGMAXYZ(シグマクシス)
三菱商事系のコンサルティング会社「SIGMAXYZ」も、企業理念と共に再定義を行いました。
2013年12月にマザーズ、2017年11月に東証一部へ、そして今年設立10年という節目を迎えたことによる大幅な刷新です。
シグマクシスは社名自体が「SIGMA+XYZ」と読んで楽しく、旧ロゴのコピーは「X partner for Your Z(=あなたの会社のクロスパートナーとなり、最大の企業価値と喜びを創造する)」とXYZに掛けたものでした。新ロゴでは、社会的な創造性も入ったコピーとなり、新たなフェーズに入ったことを感じさせるデザインとなりました。
4. folio(フォリオ)
オンライン証券サービス 「フォリオ」がβ版から正式リリースとなった際に行った、大幅なリブランディング。
掲社CDOの書いた裏側の記事は多くの人が読んだはずなので制作過程は割愛しますが、挫折しかけた場面からやがて訪れるブレイクスルーは、組織が生まれ変わるためのエッセンスに溢れています。
しかし、このリブランディング手法を真似ればよいというわけでもありません。このリブランディングで凄いのは、「旧ロゴの違和感への気付き」「キックオフに持ち込むグリップ」「完成しかけたものを投げ出せるほどの強い執念」「メンバー(社員・経営陣)の冷たく熱い協力体制」など挙げれば枚挙に暇がありません。まさに自己・自社・他者すべての対話が生んだ結晶と言えるでしょう。
5.PLAID(プレイド)
6.川崎ブレイブサンダース
息抜きとして、スポーツチームのご紹介。B.LEAGUE所属の川崎ブレイブサンダースです。
昨年12月経営権が東芝からDeNAへ譲渡され新体制となり、リングに突き刺さる稲妻がモチーフのデザインに変更されました。
DeNAの素晴らしいところは、地域に密着したデザイン刷新を行った点です。
横浜DeNAベイスターズでは一時期ビジターユニフォームをDeNAのコーポレートフォントに寄せたりと紆余曲折ありましたが、旧ベイスターズのデザインと良い折り合いをつけたデザインになりました。
今回はその気風をうまく受け継いだのか、視認性を高め、前時代のカラーを上手く引継いだ良いデザインに生まれ変わりました。
7.Fringe81(フリンジハチイチ)
昨年6月マザーズ上場のFringe81(フリンジハチイチ)。社名こそ変更していませんが、ロゴ変更を行いました。 「日本発」という意味で国番号81を冠していましたが、世界と戦う上で現行ロゴへの決断となったようです。ちなみに、 eの傾きは東京の緯度(N35°41°)を示しているとのこと。
8.doda(デューダ)
パーソルの展開する転職サービスDODAが「doda」へロゴ変更されたのも、今年の出来事でした。
今般の転職市場・ターゲット層の変化に従いリブランディングされました。 末尾の「Wake Symbol」は気付きを示しているとのことです。
基本的なことですが、企業ロゴとサービスロゴは別軸で考えるべきです。dodaについても、旧インテリジェンスがパーソルになり多くの子会社の社名・ロゴが変更されていましたが、サービスロゴはもちろんそのままでした。サービスロゴは会議室の中ではなく、顧客を思い浮かべ検討されるべきです。
9.ジャニーズ事務所
実はジャニーズ事務所もロゴを7/10変更しています。この後多くの人が知ることになる体制変更がありました。7月時点では事務所移転に伴うものという発表でしたが、もしかしたら未来の体制を示したものだったのかもしれません。
なお、ジャニーズ関係の報道がなされる際は、いまだに旧ロゴを冠した事務所の写真が使用されることが多いようです。
10.HASHILUS(ハシラス)
施設型VRコンテンツ制作のハシラスも、ロゴ変更を行いました。
掲社名は乗馬体験VRをルーツとしています。そのため、新ロゴも蹄鉄を思わせるデザインとなっています。なお、今回のブランド刷新ではドメイン変更や社屋移転も発表されたようです。
11.ムームードメイン
GMOペパボのドメインサービスロゴ「ムームードメイン」。旧ロゴはガーリーで強烈なインパクトのあるデザインでした。しかし、このたび、親しみ・丸みを残しつつデザインを一新。
ロリポップなど、なぜか2000年代はピンキーなデザインを採用するドメインサービスが散見されましたが、徐々に変化の波を感じます(ロリポップも2017年にリブランディング)。
ちなみに、運営元「GMOペパボ」の由来は、創業者家入一真氏による旧社名「paperboy&co.」がルーツです。
12.Rakuten(楽天)
楽天のコーポレートロゴ、それに付随するサービスロゴも変更となりました。
今後色々修正が必要となるロゴになると思います。コーポレートロゴのコンセプトなどは素晴らしいものがありますが、楽天Edyなど、アプリにした場合のデザインは改善の余地があるでしょう。
ベンチマークとしてはAmazonの微笑のような矢印が参考になります。Amazonも当初「Amazon Music」などのアプリデザインは褒められたものではありませんでしたが、徐々にAmazonであることも示しつつ、洗練されたデザインとなっていきました。
13.Chatwork(チャットワーク)
日本初のビジネスコミュニケーションツールChatwork(チャットワーク)は、社名(ChatWork→Chatwork)やコーポレートミッションを刷新したタイミングでロゴ変更も行いました。「働くをもっと楽しく、創造的に。」という言葉から始まったゼロベースからの見直しは、4つのチャットバブルマークはそのままに、楽しく視認性の高まったリデザインとなりました。
この刷新に伴って公開されたコーポレートミッション特設サイトは必見です。
14.ZOZO(ゾゾ)
千葉の筆頭企業ともいえるZOZO(ゾゾ)。10月の旧社名スタートゥデイから満を持して「ZOZO」へと生まれ変わりました。ZOZOマリンスタジアムにZOZOスーツに球団保有、彼女に月に私生活と、公私に圧倒的な広告効果を発信しつづけていますね。
ZOZOTOWNのようにシンプルな黒字サンセリフ体で来るだろうと予想していましたが、Zを模した多様的な図形ロゴを発表。ロゴにデザインされたさまざまな図形は、人の個性を表しており、「形も色も違うが面積は一緒」ということです。 ミッションや想いに振り切ったデザインと言えますが、記憶の中で正確に描けるロゴではなさそうですね。ちなみに、旧ロゴは上を向いた眼がモチーフになっていました。
15.まとめ
今年も様々な企業・団体が、既存ロゴのリニューアル(リブランディング)を図りました。企業ロゴが変更される際は、様々な動機があります。
<企業がロゴを見直す主な理由>
組織内でCIの見直しなど、何らかの事情で「新しいスタート」を切ることになった
顧客層が変わり、現在のロゴとの間に違和感が生じた
親会社の変更や経営統合など、組織上の動きが生じた
ロゴ変更のプレスリリースをサボったとしても、組織上影響はないが・・・
ロゴ変更の動機は色々ありますが、ロゴ変更をプレスで発信しても直接カネにはなりません。
とうぜん「生まれ変わった」ことを伝えているわけなので、直接購買意欲に訴えかけてはいないのです。
しかし、購買意欲に訴えかける発信だけを行えば、ロゴ変更はサボっていいのでしょうか?
いいえ、ロゴ変更(やコーポレートミッションの変更)があったら、必ず発信するべきです。
そもそも、商売をひとことで言うなら「人を集めて、人に売る」ことです。この「人を集めて、人に売る」とした場合、もしそこに信頼関係のある伝達網を築けていたら、一気に成功確率は上がっていきます。これがまさに、マーケティングというやつです。
そう考えると、
一見商売に関係のない自分(自社)の近況報告をすれば、「信頼関係のある伝達網」を築くことができると思いませんか?
一見商売に関係のない組織の体制変更・ロゴ変更も、同列で発信される対象であるべきなのです。
今回のロゴ紹介では多くの企業が制作プロセスを公開していました。こういった積極的な発信は、即効性はなくとも、今後クライアントやエンドユーザーの気持ちを惹きつけていくことでしょう。
文化庁の新ロゴ候補発表。制作過程を公表します
文化庁の50周年ロゴに応募し、最終候補が公表されました。僕も制作過程を発表します。
8/29に文化庁が新ロゴの最終候補4案を発表し、5日間限定でメールによる意見の受付を始めました。
■割と本気だしてロゴに応募しました
今回50周年を迎えロゴを刷新することにした文化庁。公募は、5月から約一ヶ月間募集していました。一方、僕も企業ロゴデザイナーの端くれとして挑戦。SNSでは勝利宣言をして臨みました。今回は、僕が作ったロゴの制作過程をすべて紹介します。
1.制作にあたって苦労した点/楽だった点
文化庁に作品をメールした後、SNSで高らかに勝利宣言。有言実行型というよりモブ臭がすごい。
(1)苦労した点:方針にダブりや漏れがあり、意図を汲み取るのが難しい
今回文化庁は、ロゴ募集にあたって以下の方針を示していました。
○ 新・文化庁,文化庁の新生を表現するデザインであること。
○ 文化芸術推進基本計画(第1期)に掲げられた「文化芸術の『多様な価値』を活かして未来をつくる」とのメッセージが込められたデザインであること。
これに関連し、文化庁HPを漁っていくと、体制図や文化芸術推進基本計画の資料が開示されています。
ロゴ作成を行うにあたって、この資料は最高のヒアリング材料です。しかし、メモに起こして整理すると、壁にぶち当たります。
たとえば「多様な価値=文化芸術の本質的価値及び社会的・経済的価値の追求」と定義されているのにもかかわらず、さらに細かく見ていくと、最終的に目指す目標にリンクしていなかったり、疑問が多くでてきます。
しかし、公募なので、当然放置したまま取り組むことになります。通常のロゴ作成においてはクライアントと対話すれば済むので、この点は雲を掴むような苦労がありました。
(2)楽だった点:「文化庁」という文字は予め決められていた
逆に、楽だった点もあります。「文化庁」という文字は、長官の揮毫(きごう)を使用すると決まっていたのです(※揮毫とは、筆をふるって字をかくことです)。つまり、文字を前提に組み立てるのです。
左は提出を求められた7パターン、右は筆文字をスケッチしたもの
しかし、筆で書かれたこの文字、罠があります。
「文:化:庁=9:10:8」とアンバランスな割合で、一筋縄ではいきません。この文字の縛りについては、Twitterなどでも批判的な声が散見されました。
でも僕は好意的に受け取りました。「ロゴは、この文字に調和したものを作ればよい」と割り切ることができたからです。ヒアリング内容の真意がなかなか汲み取れない中、文字が決定していることは光明です。
2.制作過程のすべて
いつもの制作アプローチと異なりますが、概ね以下の進め方でロゴを作成しました。
文化庁のポジショニングを考える
コンセプトの言語化
スケッチ
カラーの決定
デザイン:最終仕上げ
(1)文化庁のポジショニングを考える
まずは、官公庁におけるデザインの共通項を探っていきます。
民間企業では、業界の構図を一気に把握できるカオスマップのようなものが存在します。これは、デザイン的にも企業ロゴを眺めて吸収できる最高の教材です。
しかし、官公庁にカオスマップはありません。企業が作っても何の価値もないのですから。
そのため、自分で官公庁のロゴをかき集めます。(画像は、その後作成した、一定のルールを決めて自作した「官公庁一覧ロゴマップ」です)
官公庁ロゴ一覧
これを観察すると、日本の行政組織の体質やデザインに対する感性を探ることができます。穿った見方をすれば、「どうすれば採用されるデザインになるのか?」という偵察にもなります。
(2)コンセプトの言語化
次は、最も重要な工程、ロゴコンセプトの言語化を図る作業です。
通常であればヒアリングをクライアントに行います。
しかし、今回は公募のため、示された資料を読んで作りこむしか道はありません。
閣議決定された文化芸術基本計画を何度も読み込み、憑依して、重要なキーワードを浮かび上がらせます。
文章を読んで、要素をばらして、つなげて、読んで、つなげて...を繰り返して整理
(3)スケッチ
コンセプトが明らかになったら、ようやくスケッチに取り掛かります。ここでの練りこみが、作品の成否を分けるといっても過言ではありません。ブレインストーミングも意識もしつつ、方針との整合性を確認しながらスケッチします。
(※間違っても、「日本だから日の丸!w」というようなスケッチではいけません。)
スケッチ(一例)
(4)カラーの決定
ロゴのスケッチの骨子が決まったら、カラーの最終候補を絞っていきます。今回はコンセプトも重要ですが、筆文字を挿入することも勘案しなければなりません。(※間違っても、「日本だから赤!w」「前回のロゴが赤だから赤!w」ではいけません。)
いろいろテストした結果、カラーは以下と定義しました。伝統色のため、文化庁の揮毫とも調和するでしょう。
萌木色:新しく萌出でる色。新文化庁の誕生を示す。
紺桔梗:萌木色から、文化技術立国へと成熟した未来を示す。
揮毫との調和を目指して、伝統色の洗い出しを行い、サンプルで作成したロゴに載せてテスト。
(5)デザイン:最終仕上げへ
カラー調整の段階から、ようやくillustratorを駆使しながらロゴを仕上げていきます。
完成直前はこのようなフォルムになりました。
3.文化庁のロゴで何を表現したかったか
ここで初めて明かしますが、文化庁の募集要項は「デザインの概要説明は100文字まで」という縛りがありました。自分が何を伝えたかったかを改めてここで画像と共に紹介します。
Cultureの"C"を中心に、「文化芸術推進基本計画」を網羅していく
そのロゴは、「文化庁」と分かるものか?
とても重要なことですが、ロゴは、その組織が分かるかどうかが重要なポイントです。文化と聞いて誰しも想起するのは「Culture=カルチャー」という単語。文化庁の英称は「Agency for Cultural Affairs, Government of Japan」なので、「Cを表現しながら、ACAであること」を重点にしています。
すべて要素に(後付けではない)狙いがあるか?
画像の説明は、すべて今回募集要項にあった文化庁の意図を網羅的に抑えたものなので、1つ1つの要点は省略します。しかし、徹底的な言語化を行い、自分が憑依して、達成したいものをシンプルに表現することを心がけています。
実際に応募したロゴデータ全容
文化庁の募集要項は7パターンの構成が求められていたので、今回はそれをまとめた画像をご覧ください。
揮毫(筆の文字)は決まっていたが、英称のフォントは各人に任されていた。(クリックで拡大)
4.審査結果
タイトルから察しはついたとは思いますが、僕のロゴは敗れました。「惜しくも」と言いたいところですが、公募なので何位だったのかは検討もつきません。僕の制作ポリシーとしてストーリーは当然のこと「絶対に選ぶしかない魔力のあるロゴ」を目指していたので、壁の高さを感じました。特に、自分で完全否定した「日の丸モチーフ」「赤」「パッと見て文化庁とわからないもの」が最終候補に入ってくるとは...女々しくて辛いのでもうやめよう。次がんばる。
5.文化庁は、9/3まで「みんなの意見」を募集しています。
さて、文化庁は「みなさんの意見」を求めています。興味があれば、デザインについて感じたことを送ってください。いま気付いたけど、8/29に情報公開して9/3までなのか...
ちなみに、「御意見に対して個別には回答いたしかねますので,あらかじめ御了承願います。本意見募集は,新・文化庁シンボルマークを直接決定する投票ではありません。」とのことです。
■メールで送ってね!
(1)提出手段:電子メールのみ
(2)提出期限:平成30年9月3日必着
(3)電子メールアドレス:boshusymbol@mext.go.jp
(判別のため,件名は【新・文化庁シンボルマークへの意見】としてください。また,コンピューターウィルス対策のため,添付ファイルは開くことができません。必ずメール本文に御意見を御記入ください。)
■このテンプレをコピペして使ってね!
・件名【新・文化庁シンボルマークへの意見】
・氏名/団体名(団体の場合は,代表者の氏名も御記入ください。)
・性別,年齢
・職業(在学中の場合は「高校生」「大学生」など在学する学校段階を表記。)
・意見
<本記事のquote文はすべて文化庁ホームページから引用しています>