2022年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
檸檬デザイン事務所は企業と顧客の間を繋ぐデザインファームです。制作実績はこちらから。
2022年も多くの企業がCI(コーポレート・アイデンティティ)の刷新を行い、新しいチャレンジに向けてリスタートを切りました。
今回檸檬デザイン事務所では、弊所が今年話題になったと感じたロゴや、上場企業等IRの観点から取り上げるべきと判断したロゴ、また、ベンチャー企業でも気になったロゴ変更を抽出して紹介していきます。
追記:関連記事
・2023年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ
・檸檬デザイン事務所の制作実績まとめ
<注意点>
・リブランディングでないもの、軽微な変更(例:Instagramのサービスロゴ変更等)は取り上げていません。
・本記事の掲載画像は各会社のプレスリリース等から引用しています。不明な点はお問い合わせページよりご連絡ください(関係者様のみ)。
2.CITROEN(シトロエン)
3.ハンズ(旧:東急ハンズ)
4.note(ノート)(5243)
5.HIS(エイチ・アイ・エス)(9603)
6.CAMPFIRE(キャンプファイアー)
7.アイフル(8515)
8.クレスコ(4674)
9.BIPROGY(ビプロジー 旧:日本ユニシス)(8056)
10.ニッコンホールディングス(9072)
11.新電元工業(6844)
12.クックビズ(6558)
13.REVISIO(リビジオ 旧:TVISION INSIGHTS)
14.雨風太陽(あめかぜたいよう 旧:ポケットマルシェ)
15.Miletos(ミレトス)
16.まとめ
1.MIXI(ミクシィ)(2121)
明確な太字、明確なブランドメッセージ
mixi株式会社は東証プライム市場に上場するIT関連企業。創業期SNSサービス「mixi」で大きく成長しましたが、現在はスポーツやデジタルエンターテイメン、ライフスタイル領域が中核事業となっています。
今回2022年4月に行われたCI刷新は2016年来6年ぶりで、本デザインは「世界のコミュニケーションインフラとしての信頼感、安定感、普遍性、リーディングカンパニーとしての存在感を表現」したとのことです。
【デザイン評:明確な太字、明確なブランドメッセージ】
太字と赤・オレンジのラインが目を引くデザインは、同一業界の他のロゴとしっかり区別でき、新たな出発を大きく印象づけています。また、今回明確に「赤=デジタルエンターテインメント領域等、オレンジ=ライフスタイル領域等」と定義し関連ロゴを設定していることについて、多角的な展開をする企業としてのメッセージ性・戦略性を感じられます。
2.CITROEN(シトロエン)
アイコン化の波と、伝統への経緯
シトロエン(Citroën)は、1919年創業のフランスの大手自動車メーカー。社名は創業者アンドロ・シトロエンに由来し、ロゴはベベルギア(やまば歯車)をモチーフとしています。2022年9月27日に発表された新ロゴは、100余年の歴史で10回目の変更となりました。
【デザイン評:アイコン化の波と、伝統への経緯】
日産やBMWの例と同じく、自動車業界におけるロゴのアイコン化がより顕著になっていると感じます。金属製エンブレムのように煌めくロゴを好む声も根強く、このロゴの評価も業界全体かつ中長期的な視点が必要となりそうです。
しかし、単に旧ロゴをアイコン化するのではなく、創業期のロゴ(楕円部分)に回帰している点は、革新しつつ伝統へのリスペクトを感じます。創業期のデザインを生かすのは、長い歴史を持つ企業やスポーツチーム等のリブランディングを行う際とても重要な視点です。
3.ハンズ(旧:東急ハンズ)
親会社の変更。社内政治も絡むリデザイン
ハンズは2022年3月、カインズが東急不動産ホールディングスより発行済全株式を取得しました。それに伴い「東急ハンズ」の「東急」が消え、2022年10月にはロゴの刷新が発表されました。
旧ロゴは両手のモチーフが特徴的でしたが、今回の刷新では「『手』を再定義する」をコンセプトに漢字の「手」をモチーフに制作した、と解説されています。
【デザイン評:親会社の変更。社内政治も絡むリデザイン】
本記事の中では唯一となる「著名なブランドが、親会社の変更により名称及びロゴの刷新する」という事例。名称も一新するという選択肢もある中、ハンズは、旧東急ハンズにあるうち、「名称(ハンズ)」「ブランドカラー」を継承することになりました。旧ロゴをそのまま踏襲すれば良いかもしれませんが、商標権の問題により簡単ではない場合があります(本件の内部事情は不明ですが、本記事公開日現在旧ロゴの権利者は株式会社東急ハンズのままです)。
新ロゴのルーツは漢字の「手」がモチーフです。はっきり「手」と読めてしまうと「ハンズ」というブランド名を想起できないので、適度に抽象化が図れていると思いますが、置いたら倒れそうな不安定さを孕んでいるように思えます。
認知されたブランドとは「ハンズのロゴはコレだ!」と考えなくても認識できるかどうかが鍵となりますが、その結果はこれからの地道なマーケティングに委ねられると言えるでしょう。
4.note(ノート)(5243)
脳で補完したくなるカットされた「t」
noteは2022年12月21日に東証グロース市場へ上場を果たしたIT企業で、SNSサービス「note」を展開しています。今回のCI刷新は、この上場を機に発表されたものです。
変更について同社は「ものづくり、アート、ゲーム、スポーツ、あらゆる人々の営みがnoteで生まれている実態に即したものにしました。いままで以上に多様な創作活動を応援する想いを込めています」とコメント。
【デザイン評:脳で補完したくなるカットされた「t」】
シンプルな設計のSNSサービス「note」。新しくなったロゴは優しいアイコン調のシンボルを廃し、「+(プラス)」に見える「t」を冠した文字基調のロゴとなりました。
その名のとおりCutと呼ばれる技法で文字の一部がカットされているデザインです。欠けている部分は、脳がその部分を補完しようとするため、ブランド名も認識することができます。旧ロゴに馴染みのある人からは戸惑いもの声もあるかもしれませんが「視覚的にシンプルなのに、意外性のあるインパクトを持つ」という優秀なロゴの要件は十分に備えていると思います。
5.HIS(エイチ・アイ・エス)(9603)
旧ロゴを即修正。しかし...
エイチ・アイ・エスは東証プライム市場に上場する旅行事業者。1980年の創業以降旅行業界のベンチャーとして成長し、JTB等と並ぶ大手旅行代理店としての地位を確立している。新ロゴは2022年12月19日に発表。旧デザインの文字部分は引き継ぎつつ、ロゴ背景にあった図形を外したデザインに変更し、外形に囲われていた状態を「解き放つ」ことを表現したという。
【デザイン評価:旧ロゴを即修正。しかし...】
旧ロゴから図形要素を取り去りました。一般的には2019年まで使用されていたロゴの認知度が高く、前回の変更は大幅なCI刷新だったといえるでしょう。前回のデザインの説明は、要約すると「文字がなくとも一目でHISと識別できるシルエット」を目指すとのことだったのですが、僅か2年での変更となりました。
それを踏まえると、今回のデザインは「解き放つ」と表現しつつ、一貫性が保てていないようにも思えます。もし旧ロゴのデザインの反応が芳しくなかったのであれば、2018年まで使用したロゴを継承したものを考案してもよかったのかもしれません。旧ロゴは独特なシルエットでしたが、シルエットを廃して文字間の不自然さだけを残ってしまっているようです。実店舗を構えるビジネスモデルはCI変更の費用も膨大ですが、今後も変更されるような気がしています。
6.CAMPFIRE(キャンプファイアー)
識別性の高まったフォントと、「&」モチーフのシンボル
CAMPFIREは国内最大手のクラウドファンディングの運営会社。2011年にローンチされた同名サービスのほか、地域特化型、社会課題型等のクラウドファンディング運営も手掛けています。
今回のCI変更は6年ぶりで、2022年9月に変更が発表されました。細部はこちらの特設ページでもそのストーリーを確認することができます。
【デザイン評価:識別性の高まったフォントと、「&」モチーフのシンボル】
CMによって知名度の高いCAMPFIRE。そのあとCI刷新することは、かなり勇気がいるものだったかと思います。
まずフォントについて、シンプルに見やすくなりました。「ブラック・サンセリフ調」という昨今の王道ではありますが、とにかく見やすくかっこよくなりました。
シンボルマークは「&」を基調にしているとのことですが、これはいかに「&」を抽象化するかの闘いになります。
「&」という文字は繋がりを表現するキャンペーンでよく使用されている一方で、キャンペーン以外で「&」を使用する場合は注意が必要です。社名等に「アンド」が入ってないのに「&」を強調しすぎるとシンボルとブランド名の不一致が生じ、相当時間と費用を投下しなければブランド名を覚えてもらえません(たとえば、三井不動産)。
翻って今回のCAMPFIREについて。ロゴを見た瞬間に「アンドキャンプファイヤー」と読めるわけではないので、ある程度の抽象化は出来ていると思いました。
ちなみに、この「&」にはCAMPFIREの「CとF」も隠れているそうです。真意は不明ですが、クラウドファンディング(Crowd Founding)も「CとF」なので、ネーミングにも深みがあるのかもしれません。
7.アイフル(8515)
測定不能の新VI
1978年創立の消費者金融業・カードローン業者。東証プライム市場。新しいロゴは2022年7月7日にグローバル市場を見据えた新VI(ビジュアル・アイデンティティ=ロゴ)として発表されました。
【デザイン評:測定不能の新VI】
シンボルマークはほぼ旧ロゴを使用しているのですが、文字については大幅に変更されています。私は初見が「そこに愛はあるんか?」とカンフー女将が言っているCMだったので、フォントをカンフー調に寄せているだけなのだと思っていましたが、そうではなかったようです。プレスリリースには、
「アートシンボル」と組み合わせて使用する「社名ロゴ」は、温かみや優しさ、愛を感じさせる丸みのあるタイポグラフィを採用しています。各文字に「アートシンボル」と同様の右上がりの線を繰り返し、ポジティブなイメージに。全体のフォルムはデジタルデバイスやウェブ上での視認性及び利便性の高さを考慮して正方形に収め、効果的な余白が生まれるよう文字を配置しています。
とありますが、正直フォントの印象は怖い。もしかしたら、グルーバル市場で日本語を初めて見る場合は、評価が変わってくるかもしれません(ユニクロのカタカナロゴもクールと評されているようです)。結果よりも、上場企業がかなりチャレンジしていることは伝わりました。
8.クレスコ(4674)
重なり合った箇所の三角図形に釘付け
1988年創業、2001年に東証一部(現プライム市場)上場したIT企業。主に業務ソフトを中心としたコンサルティング及びソリューションサービスを提供。全体社員数は約2,700名。新ロゴは2022年4月に発表され、あらゆる対象にマッチするワイルドカードの記号として用いられる「*(アスタリスク)」がモチーフになっている、とのこと。
【デザイン評:重なり合った箇所の三角図形に釘付け】
ユーザーを惹きつけるには効果的な技法のひとつ「Hole(穴)」。重なり合った図形からぽっかり空いた三角は、キャッチーな存在感があります。
また、シンプルな線で構成されているため、ロゴの展開方法も無限に広がります。例えば企業パンフレットを制作する場合、ロゴを隅に配置しても、オレンジの同じ太さの線をデザインに取り入れたとしても、企業ブランドとして統一感のあるものに仕上がるでしょう。
9.BIPROGY(ビプロジー 旧:日本ユニシス)(8056)
虹色の頭文字をとった新社名は、ストーリーの勝利
三井物産系会社をルーツにもつBIPROGYは東証プライム市場に上場する所謂ITベンダーの大企業。2006年のアメリカのユニシスとの資本関係解消後、2022年4月に現社名に変更するとともに、新たなCIが策定されました。
【デザイン評:虹色の頭文字をとった新社名は、ストーリーの勝利】
歴史・規模・知名度も高い企業の新社名考案は、並大抵の労力ではありません。にもかかわらず、虹色の要素(光が屈折・反射した時に見えるBlue-Indigo-Purple-Red-Orange-Green-Yellowの7色)からとったBIPROGYという新名称。国際展開可能な英字の名称も限られる中、ここ一番でこのネーミングができたのは素晴らしいアイデアです。
シンボルは、安易にネーミング由来で虹色を使用しなかったことに好感。「多様性」「多くの人にとって愛される…」のような言葉に惑わされ4色5色にする事例も散見されますが、ブランドカラーは絞る方向で(増やしても差別化され意図を持ったカラーリングで)あるべきです。
10.ニッコンホールディングス(9072)
社内公募による限界
ニッコンホールディングス(ニッコンHD)は、貨物自動車輸送事業等を行う運送企業(である日本梱包運輸倉庫株式会社の完全親会社)。東証プライム市場上場企業。前身の日本梱包運輸倉庫の1953年の創業から70周年を迎えることを機に、ロゴマークを一新。シンボルマークはニッコンの「二」と「コ」をモチーフとしている。
【デザイン評:社内公募による限界】
物流業界において著名な上場企業の新ロゴ。ニッコングループ内でデザイン案を公募し、全215作品の中から選ばれたとのことです。社内公募やクラウドソーシングを活用したデザインコンペは、デザイン案をてっとりばやく収集することができますが、「So What(なぜやるのか?)」というストーリーには弱みが生じます。結果として選ばれたロゴも「社を賭して一新した!」と言い切るほど熱量を持たないが多いように思えます。
ニッコンHDは物流業界において著名な上場企業でこれ以上ないポジショニングです。しかし、社名の浸透という観点ではカメラのニコン(NIKON)や、製粉業のニップン(NIPPN)等混同される対象も多いため、この課題を検討しなかったかどうか、やや疑問が残るVI刷新となりました。
11.新電元工業(6844)
「電源業界もCI刷新」というニュースそのものに大きな期待感
新電元工業は、電源3社の一角を占める電気機器メーカー(東証プライム市場上場企業)。2022年7月から英字呼称である「Shin Dengen」をデザイン化した新VIに切り替えることが発表された。
Dengenの下のラインについて、「水平から上昇に転じていく「コンバージョンライン」は、エネルギーを有効活用し、自然環境を考え、お客様のビジネスと社会の成長に貢献していくという、私たちの価値を表現しています。」とのこと。
【デザイン評:「電源業界もCI刷新」というニュースそのものに大きな期待感】
電源業界の巨大企業も新しいロゴを発表。前述のニッコンHDなども含め、古いイメージもある業界の上場企業が次々とCI刷新に取り組むことは、業界全体のデザインに対する意識が高まるのではないかという期待感を抱かせてくれます。
デザイン自体に驚きのある技法などはありませんが、浮つきすぎないデザインに落ち着いている点は、ステークホルダーや社員等にもすぐに馴染むかと思います。ShinDengenという音自体「-n」で区切ることのできる三連符のような特性があるので、ここに着目したデザインを考案しても面白かったかもしれません。
12.クックビズ(6558)
「納得感のあるCI刷新は、すぐに浸透する」を体現
クックビズは飲食業界に特化した人材エージェント会社。2007年に創業し、2017年に東証マザーズ(現東証グロース)市場に上場を果たした。2022年8月、新CI使用、コーポレートカラーの変更等が発表された。
新しいロゴは旧ロゴにある掛け算を意味する「*(アスタリスク)」をシンボルマークに昇華させ、「解き放つ」を表現しているとのことです。
【デザイン評:「納得感のあるCI刷新は、すぐに浸透する」を体現】
シンボルにあるチェックマークのような形の集合体は、よく観察すると余白部分で「*(アスタリスク)」が見えてくる面白さがあります。
実は前述のクレスコでも「*」が登場したり、HISのCI変更理由で「解き放つ」という表現が登場していますが、2社と被ってしまったと考える人は少ないかと思います。このようなシンクロはよくある話なのですが、クックビズの場合は旧ロゴからの発展であることにすぐ納得がいきます。まさにロゴのリブランディングで大切な「なぜロゴを変更するのか」という点をうまく表現し、発信している例といえるでしょう。
13.REVISIO(リビジオ 旧:TVISION INSIGHTS)
ステージが変わるごとに社名を変更すべきなのか
都内のITベンチャー。単なるテレビの視聴率でなく、家庭に人体認識技術を活かし「視られている量」を測り、データを提供するユニークな企業として知られています。
各種リリース等によると、旧TVISION INSIGHT からREVISIOへ変更された経緯は、動画コンテンツや広告の多様化に伴い、テレビという特定の事業を表現した現在の商号を変更したとのことです。
【デザイン評:業界を取り巻く環境が変わったら社名変更すべきか】
文字数が少なくなり、赤と黒の2色に絞ったことで視認性が高まりました。
しかし、テレビや広告を取り巻く環境が変わったとして社名まで変更しまうのは、もう少し説明を聞きたい気持ちがあります。例えば、富士フイルムは写真フィルムが事業の代名詞となっていましたが、フィルムが斜陽産業になっても会社名は変更せず化粧品や医薬品業界に進出を遂げました(2006年にCI変更)。
TVSIONからREVISIOへ音の印象もガラッと変わり、むしろ難読化。なぜ英語のVISIONからラテン語のVISIOとしたのか。このCI刷新は、まだ取り返せる事業フェーズであったと捉えるのか、やや数段飛ばしな変更だったと思うかは、難しいところです。たらればではありますが、多様な変化を想定した未来予想図のもと、同じネーミングを使用するのがベストです。
14.雨風太陽(あめかぜたいよう 旧:ポケットマルシェ)
漢字、明朝ロゴ、サービス名と異なる社名。逆張りのインパクト大。
雨風太陽は、農家や漁師から旬の食材を直接購入できる「ポケットマルシェ」を運営する岩手県花巻市のベンチャー企業。同名サービスと同じ商号「株式会社ポケットマルシェ」を冠していましたが、2022年4月に「株式会社雨風太陽」への変更を発表しました。
プレスリリースでは、変更理由を次のように述べています(一部抜粋)。
私たちは「都市と地方をかきまぜる」をミッションに掲げ直し、全国各地の生産者を起点に「食」以外にも事業領域を拡大します。私たちは、生産者のさらなる所得向上に寄与し、さらには、雨や風、太陽のように地域社会に循環をもたらし、活性を促していきます。そうなれば、その土地固有の自然、歴史、風土を背景に、文化的独自性と経済的自立性を持った多様な地域が百花繚乱する日本を、未来に残していく道が開けると確信しています。
【デザイン評:漢字、明朝ロゴ、サービス名と異なる社名。逆張りのインパクト大。】
最近の新興企業のネーミングの傾向として、とにかく判を押したように①英語の名称②ゴシック調のフォント③社名もサービス名もすべて一緒、という状態が長きに亘って続いています。それが悪いということ無いのですが、そのようなネーミングだらけだと単純に埋もれやすくなるのも事実です。
そんな中で雨風太陽は、日本語一本・明朝体(少し崩したデザインで垢抜けている)・サービス名から離れビジョン特化の社名へ変更と、最近の傾向に対しての逆張りの衝撃が凄く大きいように感じます。「雨風太陽」という言葉も、地方の土や潮の匂い・質感が伝わってきそうな素晴らしいネーミングです。1つ言えるのは、先程同様、多様な変化を想定した未来予想図のもと、同じネーミングを使用するのがベストです。
15.Miletos(ミレトス)
フォントベースのみで伝わるデザインの魅力
Miletosは2016年に設立された都内のITベンチャー企業。主に経理不正チェックのAIプロダクト「SAPPHIRE(サファイア)」等を提供しています。
新しいロゴは2022年8月に発表され、「i」にあたる部分を強調したデザインが特徴。
アクセント記号を持つギリシア文字の「ί(イオタ)」と、アルファベットの「i」とのダブルイメージとして象徴的にデザインされています。「ί」は、ミレトス島(※)で物事の本質を探求し、自然哲学の礎を築いた哲人たちへの敬意を示し、「i」は、「intelligence(知性)」、「identity(アイデンティティ)」、「integrity(誠実)」を示します。
【デザイン評:フォントベースのみで伝わるデザインの魅力】
こちらも未上場ベンチャー企業ながら素晴らしいロゴだったので紹介します。旧ロゴはIT企業では汎用的なシンボルマークと社名の表記であったのに対し、今回のVI刷新で一気に命が吹き込まれるように魅力的になっています。
特筆すべきはMiletosの1文字目の「M」と3文字目の「l」の図形的特徴を上手く活かし、ブランドの狙いである「i」を強調できている点です。シンボルマークを廃してテキストベースのロゴのみの表現にもかかわらず、目を引くフォルムとなっているのは、まさにデザインの力を証明しています。
16.まとめ
以上15個の企業ロゴ変更を大企業・中小企業を取り上げてきました。変更理由は十人十色で
○周年を機に、上場を機に
現在の事業フェーズとCI(ロゴや社名を含む)が合わなくなってきてしまった
資本関係の変更に伴い現在使用する社名やロゴを使えなくなってしまった
など様々です。
また、CI変更のアプローチも様々で、著名デザイナーへ依頼したり、社内デザイナーで完結させたり、上場企業でも社内公募をする場合もありました。どのアプローチにおいても一長一短ありますが、キックオフ時での方向性の地固めや決定プロセスでのチェック機能によって大事故は防げるかと思います。