檸檬デザイン事務所 | 企業ロゴデザイン

View Original

2023年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ

檸檬デザイン事務所は企業と顧客の間を繋ぐデザインファームです。制作実績はこちらから。

2023年も多くの企業がCI(コーポレート・アイデンティティ)の刷新を行い、新しいチャレンジに向けてリスタートを切りました。過去記事において、2022年の企業ロゴ変更も紹介しています。
今回檸檬デザイン事務所では、弊所が今年話題になったと感じたロゴや、上場企業等IRの観点から取り上げるべきと判断したロゴ、また、ベンチャー企業でも気になったロゴ変更を抽出して紹介していきます。
<関連記事>
檸檬デザイン事務所の制作実績まとめ
2022年の主な企業ロゴ変更(リブランディング)まとめ

*リブランディングや軽微な変更は取り上げていません。
*掲載画像は各会社のプレスリリース等から引用しています。
*本記事はデザインの視点で執筆した記事であり、各社との関係性を示すものではありません。
*掲載内容に不明な点がある場合、お問い合わせページよりご連絡ください(関係者様のみ)。

目次
1.ペプシコーラ
2.NOKIA(ノキア)
3.BURBERRY(バーバリー)
4.テレビ東京(9411)
5.八海醸造
6.livedoor(ライブドア)
7.UUUM(ウーム)(3990)
8.日本特殊陶業(5334)
9.グロービス経営大学院大学
10.Galapagos(ガラパゴス)
11.夏目光学
12.ヒトカラメディア
13.トレイダーズホールディングス
14.その他
15.まとめ

1.ペプシコーラ

クラシカルという1つの答え

ペプシコーラは全世界の人々にとって馴染み深い飲料ブランドですが、誕生125周年を迎え2008年以来14年ぶりとなる新デザインのロゴを発表。球体の中央にブラックで「PEPSI」を配置し、3色のレッド/ホワイト/ブルーは変わらず、より均等に配置。新ロゴは「ブランドの自信と堂々とした考え方を反映しており」、伝統と未来の躍進を表現。新しいロゴは北米からスタートし、2024年から世界展開が予定されているそうです。

【デザイン評:「クラシカル」という明確な太字、明確なブランドメッセージ】
2008年から使用されていた現行ロゴを廃し、新たなロゴを発表しました。旧ロゴは100万ドルをかけ、黄金率・宇宙との相関・地球の磁場を論拠するほど壮大なものでしたが、今回は1960年代に回帰するような印象に。

リブランディングは、Tech系もFashion系もとにかくシンプルなものへと設計される傾向にありましたが、ほんの少しだけ潮目が変わってきたかもしれません。究極に精緻化するよりも、「背伸びせずクラシカルなものに」というのも一つの答えとなりそうです。

2.NOKIA(ノキア)

法人向けへの転換を強調した、60年ぶりのロゴ変更

フィンランドのかつての携帯電話業界の覇者・Nokiaは60年ぶりに新ロゴを発表。新ロゴは鋭角なデザインで、「NOKIA」の5文字を構成し、かつての青色から用途によって異なる色で表現される。CEOのPekka Lundmarkは、B2Bカンパニーへの転換を強調し、新ロゴはそのアイデンティティの変化を象徴している。

【デザイン評: 旧ロゴの要素をすべて無くすと、忘れられてしまうリスクも】
新しいロゴはとても現代的で直線的なデザインで、欠落した箇所を脳で補完したくなる要素もあります。この技法は、国内企業であればSNSを提供するnote、農業機械メーカーのkubotaのロゴで用いられています。

しかし、旧ロゴからコーポレートカラー(yale blue)もフォントも変わり、もはや旧ロゴから原型を留めていません。CEOは「旧ロゴの伝統を受け継ぎ…」という言葉でリブランディングを語ったそうですが、飛躍しすぎたリブランディングは、ハレーションを生むリスクがあります。ユーザーからの批判を最小限にして進めていきたい場合は、段階的に変更することをおすすめします。

3.BURBERRY(バーバリー)

「騎士の復権」に好意的な反応

イギリスを代表するラグジュアリーブランドであるBURBERRY。過去の記事において、ゴシック調にリブランディングを行い大きな論争を巻きおこしたBURBERRYでしたが、わずか数年で今回のロゴに変更となりました。

【デザイン評:シンプル化から一転、創業期の絵画調のシンボルを再構築】
企業ロゴのデザインを「ゴシック調でシンプルにしておけば間違いない」という風潮は、たしかにその通りで、清潔感もかっこよさもありました。しかし、シンプルなゴシック調が就活生のスーツのようにありふれて特別なものでは無いと気づき始めたのは、この当時のBURBERRYのリブランディングのタイミングだったのかもしれません。

今回のリブランディングは、1998年のロゴに回帰するのではなく、1901〜1968年(創業期)のより絵画的な騎士を再構築していることに伝統への尊敬を感じます。突如として訪れた騎士のシンボルの復権は、BURBERRYのアイデンティティを感じさせるものだと思いました。

4.テレビ東京(9411)

視聴者とのコミュニケーションを反映した「テレ東」

テレビ東京は1998年から使用していたロゴを25年ぶりに刷新。新しいロゴの赤いモチーフは、数字の「7(7ch)」、想いを心に届ける「矢(アロー)」、心を満たす「ハート」を模しているとのことです。

【デザイン評:視聴者とのコミュニケーションを反映した「テレ東」の文字ロゴ】
「テレ東」という愛称をそのまま使用するとともに、旧ロゴのカラーを概ね踏襲しており堅調なリブランディングとなりました。無理に洒脱感を出さず、国内市場向けには直球で日本語ロゴを使用する企業も増えており、とても理にかなっていると感じます。一方、実際にロゴを使用する場面を考えたとき、地方局での使用方法(7チャンネルではないテレ東系列もある)は想定する必要がありそうです。

5.八海醸造

次の100年に向け「ゴツリと手応えのある」新しいブランドロゴが誕生

八海山ブランドで知られる八海醸造は、創業100周年を期に新しいロゴを発表。手掛けたのは、過去note、クロネコヤマト、無印良品などのリブランディングの実績もある原研哉氏です。

【デザイン評価:ブランドの特性をデザインに落とし込む】

原氏はデザインについて、こんなコメントを寄稿しています。

最近は、イメージに偏りのない、つるんと無機質なロゴタイプが多い世の中ですが、Hakkaisanのロゴは、ゴツリと手応えのある特徴をつけています。酒は、どんな種類の酒でも何かしらの癖があり、そこに愛着や親しみを覚えるものです。そういう個性の肌触りを、文字のかたちに込めました

様々な「癖」を持つお酒の特徴を捉えようとするならば、無機質な文字ロゴにはなりえません。かといって、様々な記号や色やフォント等を集合させるだけの「多様性」でお茶を濁すこともしたくありません。この新しいHAKKAISANのロゴは、結果としてその質感が伝わるまっすぐなものになっているように思えます。個人的には、ここに掲載されなかった次点の案や説明も見てみたいです。

6.livedoor(ライブドア)

不思議な認知度の高さで生き続けるブランド、初のロゴ変更

「Livedoor」の歴史は非常に複雑です。最も有名だったのは2000年代に堀江貴文氏がIT業界を牽引していた時代ですが、当時も2代目のLivedoorでした。さらに所謂「ライブドア・ショック」の後も一度社としての歴史を閉じたり、事業部門が他社に渡ったりと、本当に”色々あって”現在のライブドアは2022年に設立されたものです。

【デザイン評価:教科書どおりのリブランディング】
堀江貴文氏が率いる前の初代Livedoorから使用されていた旧ロゴ。インターネット黎明期の残り香を漂わせていいましたが、遂に変更されることとなりました。デザインは、昨今リブランディングで多用されている「シンボルをシンプルに、フォントは見やすく太いものに」を地でいっているような印象です。特に遊び心をくすぐられることもありません。

Livedoorという名称・ロゴは常に「認知度が高い」という理由のみでここまでゾンビのように生きている希少なブランドです。今回の変更は、このブランドの不思議な強さを再認識するニュースでした。

7.UUUM(ウーム)(3990)

「ポップカルチャー」が伝わるリブランディング

UUUMは東証グロース市場に上場する所謂エンタメ系企業。有名Youtuberも所属しており、著名な存在になりつつあるUUUMも2023年にCI刷新を図りました。洗練された印象だった旧ロゴは「想いの熱量でセカイを切り拓く」という企業理念とともに、ポップカルチャーを思わせる文字ロゴへと変更されました。

【デザイン評:強いネーミングは、何をするにも有利に働く】
ポップカルチャーを意識し、旧ロゴの持つクールさを捨てていることに好感が持てます。こう言っては元も子もありませんが、「UUUM」という独自性のある名称が強すぎて、正直何をやってもブランディングに失敗しないように思えます。ウームという呼びやすさ、UUUMという見やすさ・読みやすさ。凄い存在感です。命名の経緯は「名前どうしようか、うーむ。」ということから始まったという逸話があるそうですが、ラッキーパンチでも何でもいいのです。

本記事ではVI(ビジュアル・アイデンティティ、所謂ロゴデザイン)について解説していますが、その前段階であるネーミングがいかに重要であるかを証明しているような例でした。

8.日本特殊陶業(5334)

「まだ変身を残しているかも?」と思わせるロゴ変更

日本特殊陶業株式会社は東証プライム/名証プレミアに上場する、点火プラグ・セラミック製品を主力とする製造メーカーです。今回、英文商号「NGK SPARK PLUG CO., LTD.」を「Niterra Co., Ltd. 」に変更し、同時に企業ロゴを刷新しました。

【デザイン評:段階的な印象を受けるリブランディング】

所謂モノづくり系で歴史のある大企業ですが、大所帯のリブランディングは大きな労苦を伴います。例えば、2023年は旧日本電産が予てから使用していた英文商号「Nidec」をそのまま使用し、ニデック株式会社に商号変更しましたが、こちらも数年単位で段階的にリブランディングを行いました。

日本特殊陶業も今回の変更により、短くて口にしやすい英称と、そのコーポレートカラーを手に入れることができたので、段階的に「ニテラ」ブランドへの統一を図っていくのかもしれません。

9.グロービス経営大学院大学

羨ましいほど伝播する、経営陣とデザインファームの熱量

国内最大級のビジネスパーソン向けの経営大学院であるグロービス。メルカリ・NIKKEIなどのブランディングの実績を持つTakramと共同で新しいロゴの策定を行いました。

【デザイン評:完璧なブランドメッセージ】

本記事をまとめるにあたって閲覧した2023年の企業ロゴ変更の中でも屈指のリブランディングでした。ブランド変更に伴う対外的なメッセージは群を抜いた丁寧さがあり、これらを知ってリブランディングを受け入れない人はいないはずです。プレスリリースの記事では選考過程・意思決定・旧ロゴへの愛着まで惜しみなく語っており、さらに両者の座談会という形の記事では前編後編にわたりその裏側を語っています。

旧ロゴは味のある「G」が特徴でした。新ロゴの「G」とフォルムは一致しないのに、面影をしっかりと感じるのは絶妙なデザインです。この制作プロセスと、それを受け止めるクライアント側。心底羨ましいプロジェクトです。

10.Galapagos(ガラパゴス)

美しいモーションロゴで築くユーザーとのコミュニケーション

株式会社ガラパゴスは、AIを活用した広告クリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」の運営をおこなう都内のITベンチャー。今回は企業の成長フェーズと、デジタルものづくりの環境の変化に直面し、CI刷新を図ったとのこと。

【デザイン評:美しいモーションロゴで築くユーザーとのコミュニケーション】

日本郵政やSUNTORY等多くの広告キャンペーンを手掛けているonehappyがリブランディングを担当されたそうです。刷新されたトップページを15秒ほど見るだけで、その魅力が十二分に伝わります。企業ブランディングはユーザーとのコミュニケーションが肝要ですが、このモーションロゴこそがその役割を担っているのだとはっきり示しているようです。

11.夏目光学

形のない「光」を表現した匠の技

夏目光学株式会社は、高精度光学レンズを手掛ける長野県飯田市の製造メーカーです。新しいロゴは「透過する光」をモチーフに、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏がデザインを担当したとのことです。

【デザイン評:形のない「光」を表現した匠の技】
キシリトールガムやおいしい牛乳など、功績を挙げれば暇のない佐藤卓氏によるデザインですが、当然案件が変われば新たな課題も生じるでしょう。このロゴの凄い点は、黄色の閃光のイメージに囚われず「光」を再定義し、これが「光」であると初見で納得してしまうこと。

また、カラーを赤から青への変更が実現している点(思い切った変更は同意が得られにくい)、細かな線のタッチ、これらも目立ってはいませんが、企業の本質に向き合っているからこそ成立しているのだと想います。

12.ヒトカラメディア

「熱源を、ともにつくる。」が伝わるシンボル

株式会社ヒトカラメディアは、オフィス開発や不動産開発など、「ミカン下北」をはじめ、様々なプロジェクトに共創支援をおこなう会社です。今回は企業成長に伴うCI刷新と、「拡大する熱源」をイメージしたVIが発表されました。

【デザイン評:「長い名称をどう伝えていくべきか」を考える】
例えば英字のブランド名を誰かに伝えるとき、一瞬で視認できるのは概ね6文字(例:TOYOTA、KAGOME)と言われています。とはいえ、文字数のためにブランド名を決めるのも本末転倒なので、どうデザインするかを考えるべきです。長い名称の場合の表現方法は①名称を短くする(例:エステー化学→エステー)②数段表記にする(例:WEF(世界経済フォーラム)のロゴ)③略称を用いる(MLB球団アリゾナ・ダイヤモンドバックス→略称D-Backsを使用)など多数ありますが、まだまだ発展する会社にあって、どのような選択をしていくかも楽しみなところです。

13.トレイダーズホールディングス

答えのない「可読性」と「独自性」のあり方

「みんなのFX」などを提供するトレイダーズホールディングス(東証プライム)は、旧ロゴを1999年以来刷新し、結果として「Traders」の可読性が高まり、コーポレートカラーに新たにレッドが加わることになった。

【デザイン評:答えのない「可読性」と「独自性」のあり方】

筆記調から、一気に視認性を意識したロゴに変更となりました。前提として「読めないロゴは認知すらされない」のはブランド展開の鉄則で、歴史的にも英字ロゴの潮流は読みやすくシンプルなものが求められるようになりました。

しかし、そんな状況下で、あえて逆張りし成功した企業は一気にブランドの価値を掴むことができるとも言えるでしょう。かなり無責任な意見ですが、トレイダーズの旧ロゴは、ケロッグのロゴのよう100年前からあったようにも見え、凄い可能性を秘めていたように思えてしまいます。

14.その他

株式会社有沢製作所(東証プライム 5208)

・株式会社BuySell Technologies(東証グロース 7685)

・株式会社マツリカ

・株式会社アツギ(東証スタンダード 3529)

・その他(画像左上から新しいロゴのみ記載)

  • Fotographer AI株式会社(旧商号:NectAI株式会社)

  • 株式会社AMDlab

  • 大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社

  • tripla株式会社(東証グロース 5136)

  • 株式会社FOR YOU(旧商号:株式会社For you)

  • 住江織物株式会社

  • FREEDOM株式会社(グループ3社の商号変更)

  • 株式会社Morght

  • 株式会社アキュラホーム

  • 株式会社INFORICH(東証グロース 9338)

  • 株式会社ファンくる

  • 株式会社アクアシステムズ

15.まとめ

2023年も多くの企業がCI刷新を図りました。CI刷新を図る理由は、節目の時期や社内外の情勢の変化、資本関係の変化など様々です。また、変更を図る際のアプローチも、社内外問わず様々な手段があります。

檸檬デザイン事務所ではCI(コーポレート・アイデンティティ)の役割は、「企業の実像を、社内外に投影するレンズである」と捉えています。そのレンズが曇っていたり傷ついていれば、光は屈折し、企業の色を届けることが出来ないでしょう。

<告知>檸檬デザイン事務所は、新会社設立やリブランディング等、事業フェーズに応じ、費用感に柔軟性を持って取り組むことを心がけています。まずはこちらのリンク先よりざっくばらんにご相談ください。