2018年気になったロゴ変更まとめ14個(下半期)
2018年も残りわずかとなりました。
2018年7月~12月にロゴを変更した主な企業・団体を紹介します(企業ロゴ・サービスロゴどちらも含みます)。
今回檸檬デザイン事務所では、弊所が今年話題になったと感じたロゴや、上場企業等IRの観点から取り上げるべきと判断したロゴ、また、ベンチャー企業でも気になったロゴ変更を抽出して紹介していきます。
*リブランディングや軽微な変更は取り上げていません。
*掲載画像は各会社のプレスリリース等から引用しています。
*本記事はデザインの視点で執筆した記事であり、各社との関係性を示すものではありません。
*掲載内容に不明な点がある場合、お問い合わせページよりご連絡ください(関係者様のみ)。
2.BURBERRY(バーバリー)
3.SIGMAXYZ(シグマクシス)
4.folio(フォリオ)
5.PLAID(プレイド)
6.川崎ブレイブサンダース
7.Fringe81(フリンジハチイチ)
8.doda(デューダ)
9.ジャニーズ事務所
10.HASHILUS(ハシラス)
11.ムームードメイン
12.Rakuten(楽天)
13.Chatwork
14.ZOZO(ゾゾ)
15.まとめ
1.Evernote(エバーノート)
説明不要のドキュメント管理サービス、Evernote(エバーノート)は8月、10周年を記念して大きな刷新。フォントはEVERNOTEからEvernoteへ、グリーンはより濃いものとなりました。
通常視認性を失いやすい「大文字から小文字へ」の変更、さらに最近のデザインの潮流という観点で見ると、『EvernoteがSerifという選択をした』という事実は革命的な意味を持つでしょう。象のデザインは、ゼロから見直しを図って結果的にフォルムを修正したとのことです。デザイン変更の理由は、CEOのポストで語られています。
2.BURBERRY(バーバリー)
有名ブランドのロゴ変更も、今年8月に飛び込んできたニュースです。バーバリーは20年ぶりのロゴ変更。力強いsans serif調に。 また、同時期に新たなモノグラム柄(創業者トーマス・バーバリー氏のイニシャルがモチーフ)も発表されています。
「新しいターゲットを探したリブランディングなのだろうか?」と推測せざるを得ないリブランディングです。ブランド成長に追従するリブランディングの手法では『BURBERRYの文字を消して騎士のマークのみを残す』という策が考えられるため、この方針転換は衝撃的でした。今後、どのような結果になるのかを見守る必要があります。
3.SIGMAXYZ(シグマクシス)
三菱商事系のコンサルティング会社「SIGMAXYZ」も、企業理念と共に再定義を行いました。
2013年12月にマザーズ、2017年11月に東証一部へ、そして今年設立10年という節目を迎えたことによる大幅な刷新です。
シグマクシスは社名自体が「SIGMA+XYZ」と読んで楽しく、旧ロゴのコピーは「X partner for Your Z(=あなたの会社のクロスパートナーとなり、最大の企業価値と喜びを創造する)」とXYZに掛けたものでした。新ロゴでは、社会的な創造性も入ったコピーとなり、新たなフェーズに入ったことを感じさせるデザインとなりました。
4. folio(フォリオ)
オンライン証券サービス 「フォリオ」がβ版から正式リリースとなった際に行った、大幅なリブランディング。
掲社CDOの書いた裏側の記事は多くの人が読んだはずなので制作過程は割愛しますが、挫折しかけた場面からやがて訪れるブレイクスルーは、組織が生まれ変わるためのエッセンスに溢れています。
しかし、このリブランディング手法を真似ればよいというわけでもありません。このリブランディングで凄いのは、「旧ロゴの違和感への気付き」「キックオフに持ち込むグリップ」「完成しかけたものを投げ出せるほどの強い執念」「メンバー(社員・経営陣)の冷たく熱い協力体制」など挙げれば枚挙に暇がありません。まさに自己・自社・他者すべての対話が生んだ結晶と言えるでしょう。
5.PLAID(プレイド)
CX体験プラットフォーム「KARTE」などで知られるPLAIDは、7月より氷山をモチーフにしたロゴを使用しはじめました。
PLAIDもリブランディングの際には記事を公開しています。制作過程を公開していくことは、関係者・顧客との対話を生み、プラスにしかなりません。なぜそう決断したのかを説明しているため、一時的な反発があったとしてもすぐに鎮静化します。やがて愛されていくことはInstagram、Airbnbなどがすでに証明しています。
ちなみに、2014.8.25~2018.7.1 まで使用していた旧ロゴは社名の由来である「楽しむ(Play)+手助けする(Aid)」の頭文字を重ねたものでした。
6.川崎ブレイブサンダース
息抜きとして、スポーツチームのご紹介。B.LEAGUE所属の川崎ブレイブサンダースです。
昨年12月経営権が東芝からDeNAへ譲渡され新体制となり、リングに突き刺さる稲妻がモチーフのデザインに変更されました。
DeNAの素晴らしいところは、地域に密着したデザイン刷新を行った点です。
横浜DeNAベイスターズでは一時期ビジターユニフォームをDeNAのコーポレートフォントに寄せたりと紆余曲折ありましたが、旧ベイスターズのデザインと良い折り合いをつけたデザインになりました。
今回はその気風をうまく受け継いだのか、視認性を高め、前時代のカラーを上手く引継いだ良いデザインに生まれ変わりました。
7.Fringe81(フリンジハチイチ)
昨年6月マザーズ上場のFringe81(フリンジハチイチ)。社名こそ変更していませんが、ロゴ変更を行いました。 「日本発」という意味で国番号81を冠していましたが、世界と戦う上で現行ロゴへの決断となったようです。ちなみに、 eの傾きは東京の緯度(N35°41°)を示しているとのこと。
8.doda(デューダ)
パーソルの展開する転職サービスDODAが「doda」へロゴ変更されたのも、今年の出来事でした。
今般の転職市場・ターゲット層の変化に従いリブランディングされました。 末尾の「Wake Symbol」は気付きを示しているとのことです。
基本的なことですが、企業ロゴとサービスロゴは別軸で考えるべきです。dodaについても、旧インテリジェンスがパーソルになり多くの子会社の社名・ロゴが変更されていましたが、サービスロゴはもちろんそのままでした。サービスロゴは会議室の中ではなく、顧客を思い浮かべ検討されるべきです。
9.ジャニーズ事務所
実はジャニーズ事務所もロゴを7/10変更しています。この後多くの人が知ることになる体制変更がありました。7月時点では事務所移転に伴うものという発表でしたが、もしかしたら未来の体制を示したものだったのかもしれません。
なお、ジャニーズ関係の報道がなされる際は、いまだに旧ロゴを冠した事務所の写真が使用されることが多いようです。
10.HASHILUS(ハシラス)
施設型VRコンテンツ制作のハシラスも、ロゴ変更を行いました。
掲社名は乗馬体験VRをルーツとしています。そのため、新ロゴも蹄鉄を思わせるデザインとなっています。なお、今回のブランド刷新ではドメイン変更や社屋移転も発表されたようです。
11.ムームードメイン
GMOペパボのドメインサービスロゴ「ムームードメイン」。旧ロゴはガーリーで強烈なインパクトのあるデザインでした。しかし、このたび、親しみ・丸みを残しつつデザインを一新。
ロリポップなど、なぜか2000年代はピンキーなデザインを採用するドメインサービスが散見されましたが、徐々に変化の波を感じます(ロリポップも2017年にリブランディング)。
ちなみに、運営元「GMOペパボ」の由来は、創業者家入一真氏による旧社名「paperboy&co.」がルーツです。
12.Rakuten(楽天)
楽天のコーポレートロゴ、それに付随するサービスロゴも変更となりました。
今後色々修正が必要となるロゴになると思います。コーポレートロゴのコンセプトなどは素晴らしいものがありますが、楽天Edyなど、アプリにした場合のデザインは改善の余地があるでしょう。
ベンチマークとしてはAmazonの微笑のような矢印が参考になります。Amazonも当初「Amazon Music」などのアプリデザインは褒められたものではありませんでしたが、徐々にAmazonであることも示しつつ、洗練されたデザインとなっていきました。
13.Chatwork(チャットワーク)
日本初のビジネスコミュニケーションツールChatwork(チャットワーク)は、社名(ChatWork→Chatwork)やコーポレートミッションを刷新したタイミングでロゴ変更も行いました。「働くをもっと楽しく、創造的に。」という言葉から始まったゼロベースからの見直しは、4つのチャットバブルマークはそのままに、楽しく視認性の高まったリデザインとなりました。
この刷新に伴って公開されたコーポレートミッション特設サイトは必見です。
14.ZOZO(ゾゾ)
千葉の筆頭企業ともいえるZOZO(ゾゾ)。10月の旧社名スタートゥデイから満を持して「ZOZO」へと生まれ変わりました。ZOZOマリンスタジアムにZOZOスーツに球団保有、彼女に月に私生活と、公私に圧倒的な広告効果を発信しつづけていますね。
ZOZOTOWNのようにシンプルな黒字サンセリフ体で来るだろうと予想していましたが、Zを模した多様的な図形ロゴを発表。ロゴにデザインされたさまざまな図形は、人の個性を表しており、「形も色も違うが面積は一緒」ということです。 ミッションや想いに振り切ったデザインと言えますが、記憶の中で正確に描けるロゴではなさそうですね。ちなみに、旧ロゴは上を向いた眼がモチーフになっていました。
15.まとめ
今年も様々な企業・団体が、既存ロゴのリニューアル(リブランディング)を図りました。企業ロゴが変更される際は、様々な動機があります。
<企業がロゴを見直す主な理由>
組織内でCIの見直しなど、何らかの事情で「新しいスタート」を切ることになった
顧客層が変わり、現在のロゴとの間に違和感が生じた
親会社の変更や経営統合など、組織上の動きが生じた
ロゴ変更のプレスリリースをサボったとしても、組織上影響はないが・・・
ロゴ変更の動機は色々ありますが、ロゴ変更をプレスで発信しても直接カネにはなりません。
とうぜん「生まれ変わった」ことを伝えているわけなので、直接購買意欲に訴えかけてはいないのです。
しかし、購買意欲に訴えかける発信だけを行えば、ロゴ変更はサボっていいのでしょうか?
いいえ、ロゴ変更(やコーポレートミッションの変更)があったら、必ず発信するべきです。
そもそも、商売をひとことで言うなら「人を集めて、人に売る」ことです。この「人を集めて、人に売る」とした場合、もしそこに信頼関係のある伝達網を築けていたら、一気に成功確率は上がっていきます。これがまさに、マーケティングというやつです。
そう考えると、
一見商売に関係のない自分(自社)の近況報告をすれば、「信頼関係のある伝達網」を築くことができると思いませんか?
一見商売に関係のない組織の体制変更・ロゴ変更も、同列で発信される対象であるべきなのです。
今回のロゴ紹介では多くの企業が制作プロセスを公開していました。こういった積極的な発信は、即効性はなくとも、今後クライアントやエンドユーザーの気持ちを惹きつけていくことでしょう。